赤と緑の選択

白鷺雨月

第1話 赤いきつねと緑のたぬき

夜勤を終えた僕は自宅のマンションに帰ってきた。

時刻は午前八時。

熱いシャワーを浴びた後、ジャージに着替え、僕はベッドにはいった。

妻の貴美はすでにパートにでていた。

疲れていた僕はすぐに眠りについた。



ガチャガチャという音がして、僕は目を覚ました。

壁の時計は午後十二時を半分ほど過ぎていた。

ベッドをでて、リビングにいくとエコバッグを持った貴美がコートを脱いでいた。

「あら、おはよう」

貴美は言った。

「おかえり」

僕は言った。

「お昼買ってきたわよ」

貴美は言い、エコバッグからいろいろと取り出した。

お稲荷さんのパックにから揚げ、サラダ、そして赤いきつねと緑のたぬき。

ほう、なかなか豪勢だ。

「安かったのよね」

貴美は言い、シンクで手を洗った。

続いて、僕も手を洗う。

電気ケトルに水を入れ、湯をわかす。

その間に貴美はお稲荷さんやから揚げ、サラダをそれぞれの皿に盛りつけた。

おお、なかなかセンスがいいな。

これはうまそうだ。


お湯がわいたので僕は赤いきつねと緑のたぬきのふたをあけ、お湯をそそぐ。

後は三分まつだけだ。

「ねえ、どっち食べる」

貴美は訊いた。


赤いきつねと緑のたぬきのどちらを食べるかという問いだ。

僕はふと考えた。

赤いきつねを選ぶとお稲荷さんのお揚げさんと被ってしまう。

できればそれはさけたい。

となると緑のたぬきだ。

だが、貴美はそば派だ。

僕はどちらかといえばうどん派だ。

普通にいけば僕が赤いきつねで貴美が緑のたぬきですんなり話がつく。

だが、今日は違う。

お稲荷さんがいるのだ。

できれば同じ味が被るのはさけたいものだ。

さて、どうしようか。

僕が頭を悩ませていたところ貴美が口をひらいた。

「じゃんけんで決めましょうか」

と言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る