歩幅



 毎回、不思議だったんだ。

 身長差があるから、歩幅だって違う。

 例えば、幼馴染の彼らには、いつの間にか、置いていかれてしまう。

 うちの弟は――優しいから、歩幅を合わせようとしているのが分かる。でも、合わせようと常に気を配っているのも、分かってしまう。

 そして、冬君。あなた、です。

 不思議って、思う。

 合わせている感覚はまるでない。でも、同じペースで歩いている。それが自然で。彼の方が足が長い。歩幅だって当然、違うのに。

「ん?」

 どうやら、私の視線に気付いたらしい。

「……二人で一緒にお散歩するの、好きだなぁって」

「うん、俺も」

 破顔して、そんなに笑顔を浮かべるのズルい。そんなの、もっと好きになるに決まっている――。




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