甘い記憶ならもう溶けた


 甘い記憶ならもう溶けた。当たり前のようにもらって、甘いチョコートを頬張って。お返しのコトなんて何も考えていなかったら、妹に怒られた。季節は巡って。昨日と同じような日常が来ると信じていた。でも、そんなコトあり得ないと知るのは、もう少し大人になってから。あの時、ああすれば良かった、こうすれば良かったと思っても、結局はもう遅い。あの子の作ったチョコレートの味も思い出せない。あんなに、甘かったはずなのに。少し、甘ったるい気きらいはあった。あの子は今、彼しか見えていない。そもそも、僕のことなんか見えていない。そんなことは、とっくに分かっていて――



「ひかちゃん、はい。チョコレート」

 その声に甘えそうで――。




________________



Twitter創作企画

毎月300字小説企画

@mon300nov

第2回「甘い」に参加。


カクヨム換算、300字

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る