第13話 砂漠産の陰キャ
「シャステルの女子なんて全員わしらを見下しているに決まっておる! こちらを砂漠からきた未開の蛮族扱いして、ことあるごとに上から目線で心を折ってくるに違いない! 気をつけろダリフ! 近づいただけで『ちょww砂埃立つんですけどーwww』とか言われるぞ!」
初対面の男からの理不尽な罵倒に、アルムは怒るより先に目が点になった。
「すいません。ちょっと陰キャで悪い想像をするのが玉に瑕で」
「砂漠の王子、陰キャなんですか!?」
慣れているのか平然と謝罪する従者の言葉に突っ込まざるを得ない。
(陰キャってどっちかというと「じめじめした性格」のイメージなんだけど、乾いた砂漠で陰キャって育つもの?)
アルムは思わずすごくどうでもいいことを考えた。
「こんちはー」
「「ひっ! シャステルの魑魅魍魎どもめ、こんな幼子を使ってわしの懐に潜り込もうとは……! 隙を見てわしをしとめるつもりじゃな! 愚かな……幼子を使うまでもない! こちらをちらちら見ながら会話されただけで自分の悪口を言われている気がして、心が折れて三日は誰とも会いたくなくなるのじゃぞ!」
初めて会った人に挨拶しに行ったエルリーに怯えて、自らのメンタルの弱さを暴露する砂漠の王子。
「ハールーンがいるうちに引き渡し書を。精神に限界が来たら引きこもるので、こいつ」
淡々と引き渡しをすませようとする従者を見て、アルムは「砂漠の民は忠誠が篤いんじゃなかったっけ?」と思った。
「悪いが、そなたがいるとハールーンが扉の陰から出てこない。部屋を出ていてもらえるか?」
「あ、はい……」
「騙されるなダリフ! シャステルの女狐はおとなしく従うと見せかけて、隠し部屋とかでわしらの醜態を見物して、後で仲間達と「蛮族でも名前は書けるのね。砂に書いて練習したのかしら?」とか言ってあざ笑うつもりじゃ!」
「偏見がすごい!」
あまりの言いがかりに、アルムは思わずハールーンを軽く吹っ飛ばしていた。
壁に背中を打ちつけて、ハールーンが「うぐっ」と呻くのとほぼ同時に、アルムの耳元でちゃきっと金属音がした。
「貴様、なにをした……?」
先ほどまで飄々とした無表情を湛えていたダリフが、怒りをにじませた形相でアルムの首筋に短剣を突きつけていた。
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