第109話 分断
ロランドたちは掲示板の民を数人切り捨て、なんとか闇の城の庭に侵入することができた。
「ここは我らに任せ、早くヨハンを!」
「すまない! 任せるぞ!」
掲示板の民が庭に入ってこられないように門を塞ぐ最果てメンバー。外の敵を彼らに任せると、ロイヤルナンバーズの6人はクリスタル破壊のため、庭の攻略を試みる。
「うわぁ……本当にコピペなんだな」
「色以外はウチと全く同じ構造ですぞ~」
「わかりやすくていいではないか。さぁ、早速敵のお出迎えだぞ」
侵入した6人を待ち構えていたのは、10~20体程の上級召喚獣たち。その召喚獣たちを前にして、ギルティアが目を輝かせる。
「召喚獣うじゃうじゃ! つまりアタシの出番ねっ!」
嬉々として【換装】スキルを発動させたギルティアは、白い刀身の剣【オメガソード】を取り出す。バチモンコラボイベントにて入手可能なユニーク装備である。
その能力は、持ち主を召喚獣のあらゆる攻撃から守り、さらにスキル【オールデリート】を発動すれば、フィールド内の全ての召喚獣を破壊することができる。
「いいですぞ~」
「やっちゃってくださいギルマス」
「いいわよ! さぁ食らいなさい――オールデリ……」
「待ってください」
意気揚々とスキルを発動させようとしたギルティアを、ロランドが止めた。
「何よ兄貴。アタシが気持ちよく無双しようとしてるのに!」
「あれを」
「あれって……げぇ……」
ロランドが庭の奥、城の入り口を指さす。そこにはニヤニヤとしながら扉に寄りかかるコンの姿が。その肩には召喚獣の【管狐】が乗っている。
「彼女のスキル【三大厄災】を忘れた訳ではないでしょう。オールデリートを使えば彼女の管狐も破壊することになる。そうすれば、またウィルスに感染しますよ」
「安心してよ兄貴。アタシだってあの女の狙いくらい読んでいたわ。あの女のスキルは直近で使用したスキル3つを封印するスキル。でもアタシ、今日はまだスキル何も使ってないから、封印されるのはオールデリートだけで済むわ」
ロランドが「今【換装】を使ったでしょう……」とため息をついていると、横からカイも口を出してきた。
「いや、ロランドの言うことに従っておけ妹」
「そうですね。三大厄災というスキル名からして、あと二種類、未知のウィルスがあると見ていい。あのコンというプレイヤーの召喚獣を不用意に倒すのは愚策ですね」
「地道に倒すしかないですぞ~」
そして、ギルティア以外の5人はそれぞれ、召喚獣と戦い始めた。
「どうだ? ここは一つ、誰が一番召喚獣を倒せるか勝負するか?」
「いいですぞ~」
「フッ、負けるつもりはないよ」
「それ私不利じゃないですか? まぁやりますけどぉ」
カイが言い出した言葉に、ガルドモールやグレイス、クリスターも乗る。彼らはそれぞれバラバラに召喚獣に挑みはじめた。
「ふ、ふん。別にスキルを使わなくたって、この剣は召喚獣に特効なんだから……このまま戦うわよ」
どことなく疎外感を味わいながら、ギルティアも召喚獣討伐に参加するのだった。
***
***
***
そして、ギルティアが戦いを開始した頃、庭の中央ではブレイブマンモスに跨がったメイが、6人の戦いを見て、体を震わせていた。
「あわわ……コンさん秘蔵の召喚獣たちが、あっという間にやられちゃうよぉ」
今日、庭の防御を任された召喚獣たちは、全てコンが用意したものである。それも、今までのものとは違う、コンがかつての仲間から託された召喚石だ。
かつてはプレイヤーと共にフィールドを駆け巡り、共に冒険してきた召喚獣たち。プレイヤーを通じて、最果ての剣と戦ったことのあるモンスターも中にはいるかもしれない。
引退する際に手渡された召喚獣を、かつての仲間の相棒だった召喚石を、コンは大切に保管していた。だが、それをここで解放したのだ。
その時のコンの表情があまりにも冷たく、暗く、そして綺麗で。メイの心にずっと引っかかっていた。一体どのような思いで、思惑で。この場にそんな大事な召喚獣を呼び出したのだろうか。
「って、そんなこと考えてる場合じゃないよね。あの人たちがなんでバラバラに戦ってるのかは謎だけど……チャンスだよこれは!」
そろそろ作戦を実行に移そう。そう思って、メイは自分が跨がっているブレイブマンモスの頭部を撫でる。
「お願いね……ブレイブマンモスくん」
「ぱおおぉぉぉム」
「いくよ――【アイスエイジ】!!」
メイがブレイブマンモスのスキルを解放する。すると、体が光りに包まれ、ブレイブマンモスを中心に、地面が氷に包まれていく。
その氷は庭全体を包み込むと、合わさり、いくつもの壁を出現させる。
「なっ!?」
「馬鹿な……」
「なんだこのスキルは!?」
「まさかっ」
「分断された!?」
氷の壁は庭に巨大な迷路を作り出し、敵を分断することに成功する。そして、メイは庭の中央に高く伸びた氷塔に立つ。ここからならば、庭の全てが見渡せる。どの召喚獣を誰にぶつけるか、全てが見える。
「ありがとうねブレイブマンモスくん。君の分まで、頑張るから!」
メイはアイスエイジによって魔力を失い消滅するブレイブマンモスに感謝の意を伝える。
そして、ターゲットであるギルティアを発見する。
「えっと……あの人は先に通しちゃっていいんだよね。じゃあギルティアさんのところには召喚獣は送らないで……他の人のところには沢山召喚獣を送り込んじゃう!」
ゼッカVSギルティアを実現させるため、メイの采配が開始された。
***
***
***
「考えていても仕方がない。とにかく城の入り口を目指しましょう」
「わかりましたぞ~」
突如出現した氷の壁によって、他のメンバーと分断されたロランドとガルドモールは城の入り口を目指して走っていた。
「この判断力。カリスマ。やはりロランド殿は頼りになりますぞ~。先ほどのカイくんではありませんが、どうです? 本当にギルドマスターをやられては」
次々迫り来る召喚獣たちを切り伏せながら、ガルドモールがロランドに話しかける。
「はぁ……最果ての剣は妹と友人が作ったギルドです。私がギルドマスターをやるはずがないでしょう」
「まぁそうですが。その友人とやらも、くだらない諍いで抜けてしまいましたぞ~? それに、殆どのメンバーがロランド殿にギルマスになって欲しいと思っておりますぞ~?」
「フッ。器ではありませんよ、ギルマスなんて。おや?」
敵を発見したロランドとガルドモールが止まる。彼らの行く手を遮ったのは。
「君は……オウガくんか」
「うっす。しかし、師匠と出くわすなんて……相変わらずついてないな、俺」
はぁ……とため息をつくオウガ。だが、すぐに顔を引き締めると、不敵な笑みを浮かべる。
「こういうの、なんて言うんでしたっけ? そうだ、恩返しだ。それ、させてもらいますよ、師匠」
「フッ。育てた弟子に超えられる。そんなに嬉しいことはない。いいでしょうオウガくん。手加減なしの……真剣勝負だ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます