第46話 その後

「はい、10億ゴールド、確かに受け取りました」


 ヨハンは約束通りロイヤルガードを100体。天帝ゼルネシアを3体手渡し、その代金として10億ゴールドを受け取る。色々トラブルはあったものの、最後は予定通り、召喚石を売り渡す事に成功した。


「……」

「……」


 ゼッカとギルティアの両者はにらみ合ったまま、口をきこうともしない。


「全く、二人ともお子様どすな」

「あなたが言えたことじゃないでしょう?」


 ギルティアを多少やり込めて満足しているのか、そんな事を口走るコンにヨハンが突っ込んだ。


「ゼッカさん、もう他のギルドに所属し、楽しそうにしている貴方にこんな事を言うのは心苦しいのですが、最果ての剣に戻るつもりはありませんか?」

「ち、ちょっとお兄ちゃん!?」


 ロランドの突然の発言に、ギルティアだけではなく、ヨハンやコンも驚く。


「我が妹はバカ故、自分の気持ちを理解しておりません。ですが私は知っています。妹が時折、三人で遊んでいた頃のスクショを寂しそうに眺めている様を」

「は……はあああ!? そんなの見てないし! 全部消したし!」

「ロランドさん。何度も言ってますが……戻るつもりはありません」


 ゼッカはきっぱりと言い放った。おそらく何度も戻るように言われていたのだろう。ゼッカの言葉に、ロランドは残念そうな表情をする。


「では、せめて仲直りをしていただけませんか?」

「それは……まぁ」


 ゼッカがまんざらでもなさそうに横目でチラリとギルティアを見やる。


「ま、ゼッカが謝るなら許してあげない事も無いけど?」

「はぁ? 私が謝る? 何を?」

「わかってないの?」

「は?」

「あ?」


 とても仲直り出来そうもない二人の様子を見て、ロランド、ヨハン、コンがため息をついた。


「全く、二人とも子供ではないんですから。いつまでもしょーもない事で喧嘩してないで、仲良くしましょうよ」

「しょーもないって何よ!!」

「約束を破ったのはギルティアなんだから! そっちが謝るのが筋でしょう!」


「わかりました。悪いのは全て我が妹です」


 ギルティアの非を全面的に認め、頭を下げる兄ロランド。


「ちょっとお兄ちゃん、勝手に謝らないでよ!」

「いや、マジで仲直りして、以前のように妹に勉強を教えてあげてくださいよゼッカさん。でないと妹の成績は……」

「そんなにヤバいんですか……?」ゴクリ

「ええ、どれくらいヤバいかというと、先生の言っている事を全く理解できないのだとか」

「それ私が救えるレベルですか?」


 ギルティアの惨状は、IQ100の頭脳を誇るゼッカでも手に余りそうだった。


「うわああああああ止めてえええええええ!!」


ロランドとゼッカの会話に涙目になったギルティアが割って入る。


「ふ、ふん! 勉強なんて出来たって、ゲームで勝てなきゃ意味ないわ!」

「「「「それはない」」」」

「ふぐっ……」


 4人から一斉に否定されるギルティア。目いっぱいに涙を溜めつつゼッカを睨むと、ロランドと共に去って行った。呆然とそれを見送るゼッカの肩を、コンがぽんと叩いた。


「うちはな……悔しかった。あれだけ召喚師の悪口言うて、のうのうとうちの前に顔を出してあげく召喚石が欲しいなんて言う、あのギルマスの神経が、信じられんかった」

「やめてくださいよ……」

「でも今、理解した。あの子は性格が悪くてうちの事を忘れたんやない。単純に頭が悪いから、うちのことを記憶しとらんかったんや」

「気づいてしまいましたね……」


「ま、まぁとにかくひと段落したし、レンマちゃんたちと合流しましょうよ?」

「そうやね。あの二人にも迷惑かけたわ」


 ヨハンの提案により、3人は中央広場へと戻る。着ぐるみゴリラとマッチョピエロという正直近寄りたくない組み合わせにも関わらず、召喚石はかなり売れていたようだ。


 全てを売り切った訳ではないが、約100億ゴールドの売り上げを手にすることが出来た。元手の19億を、5倍以上に増やすことが出来たのだ。一人のプレイヤーがレベル50までに装備に使う金額の平均が1億ゴールドな事を考えると、コンのこの作戦は成功と言っていいだろう。

 残った召喚石はギルドを問わず、新規召喚師プレイヤーの援助として使うことにして、本日は解散となった。


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