プロローグ

【プロローグ】


「さあさあ出て来やがれ魔王!」


 処刑台の上では傷だらけの少女たちが涙を流す。


「何だ……ありゃぁ……っ」


 下卑た顔の魔物を瞬く間に一掃する一陣の風が吹き荒れる。

 水色の髪が揺れる。身体に似合わぬ大剣を容易く操る少女は、眼前の大敵           ――魔王の威圧をものとも思っていない。


「ありえねぇ……こんなのありえねぇ……」


「君がどれだけ否定しようと、現実としてサーシャはここにいるよ」


 凛とした面持ちで彼女は剣を構える。

 観念したのか、魔王もまた臨戦態勢を整える。


 その隣では見慣れた愛しい三つの顔が、同じように戦況を見つめる。

 始まる。きっとこれが、最終決戦。

 固唾を呑んで見守る。



 ――これは、魔王(ぼく)が愛しい皆を守るために魔王(てき)を討つ。

そんなお話の、ほんの一幕。

 


 難解に聞こえるかもしれない。

 矛盾に思えるかもしれない。

 けれどこれは全て事実だ。


 もし、ほんのわずかにでも、こんなバカげた話に興味があるのであれば、これより先の世界に手を――指を伸ばして欲しい。

 決して退屈はしない時間を約束しよう。

 覚悟はできた? じゃあお招きしよう。


 ようこそ。

 そこそこ都合が良く、それなりに何でもござれで、ちょっとした刺激がありつつも、愉快な冒険の世界へ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る