先輩による俺の落とされ方
カス
第1話 先輩
「梶原くん」
改札を通ってすぐに、こちらに手を振りながら呼びかけている人がいる。先輩だ。
「なんでわざわざ待ち伏せてるんですか。」
「そんなの梶原くんの迷惑そうな顔を見るために決まってるじゃない。」
えらく嬉しそうに言われたのでできる限りの作り笑いをしてやった。
「やっぱり笑った顔も可愛いなー」
困った顔を見るためにというから笑ってやったのに結果がこれだ。この人は話が通じない。
「さぁ早く帰ろ?」
先輩はとても厄介だ。
梶原くんこと梶原楓は高校1年生である。そこそこの進学校に入学することになり、そこそこ裕福な家庭で育ってきた楓は両親からの記念、というそこそこ理解できない理由でとあるマンションで一人暮らしすることになった。第一、思春期真っ只中の高校1年生からすると一人暮らしなんて大変喜ばしいことであった。
そして、先輩こと若葉梛は引越し先の隣人だった。同じ学校であり、最初に引越しの挨拶をした時には学校の話などで打ち解けることができた。
取り敢えず隣人とは仲良く出来そうだしその手のトラブルは安心だ━━━━━━と思っていたはずだった。
「梶原くん。学校には慣れた?」
「まぁ、それなりに。」
「じゃあお友達はできたの?」
「それなりに…」
マンションが同じなだけに帰路も一緒である。帰る時は先輩がマシンガントークの如く学校でのあれやこれやを聞いてくる。
「寂しかったら私の教室来ても良いからね?2年3組廊下側の1番後ろ。結構話しかけやすい位置だと思わない?」
「行きませんし1年が2年の教室行くなんてどう思われるか…」
「そんなの私が守ってあげる!」
「そういう問題じゃないんですよ。」
慈愛あふれる目でこちらに両手を広げていたので、いかにも面倒くさいという表情で歩いていく。
彼女は少し変わっている。進学校なだけあって勿論勉強はできるのだと思う。しかし、1年でしかも最近引越してきた見ず知らずの楓に厄介なぐらい干渉してくる。
今日もこうして、わざわざ部活帰りに待ち伏せしてまで共に帰っている。
「で、先輩なんなんですか?」
なぜここまで構うのか、そして何がしたいのか、揶揄われるだけならごめんだ。
「ん〜、何が?」
「なんで俺にこんなに構ってくるんですか?」
「決まってんじゃん!
━━━━━━━君が好きだから、だよ♪」
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