一端の学生の水たまり
烏賊蛸
これは闇を抱える学生の話
その日もいつものように学校で普通に暮らしていた。
ただ何気なくどこにでもいるような学生の日常だ。
予鈴と共に教室に入ると予想通り担任の姿はなく
ぼんやりと、だけど真面目に授業を受ける。
先生方が挙手を求める場面ではなるべく早めに挙手を。
だけど目立ちたくはないからそこそこの位置に手を上げる。
その問いの内容が分からなくても少し遅れて挙げる。
もし当てられたら一瞬の羞恥を支払おう。
私は頭は悪くない。ただ努力を一生でしたことがないだけ。
だから定期テストでは内申の4の評価しか取れないから、それは授業で補うしかない。
流石に副教科はそうもいかないから3なんてざらなんだけど。
提出物を出し忘れたのは本当に痛かった。お陰で3になってしまった。あれがなければ4だっただろうに。
嫌なことを思い出したとこの出来事を脳内から追い出す。
そうして再び挙手の時間となり、どれが先生の求めている考えか、一瞬で考察をした。
***
そうこうしているうちに四時間が過ぎた。
今日は四時間授業の日であるため他の人たち…友人らも少し浮かれているように思える。
だけどその肝心の最後は体育で、見た目ではそうでもないけれど元々の体力が少ないからちょっと疲れたでなく、今すぐ崩れてもおかしくないぐらいに疲労も溜まってた。
肺も圧迫するような苦しさを訴えていた。
だけど私は給食委員だから給食台の準備をしないと。
一日中歩いたような疲労を無視し、速攻で着替え教壇に向かい移動させる。
もう一人の委員もはじめ、いつも通り給食台を出すまでが終わった。
もう一人の人は給食を運んでくる当番たちを怒声を上げながら集め、私は布巾で台を拭いていく。
先生が相方を働かない、また本人も極力働かないと言っているが私はそうは思えない。
いや、もしかしたらまた私の性質がはたらいて私に有利な状況になっているだけかもしれないけれど。
当番が行くと同時に仕事が終わる。
最近は手抜きだけれど、それは分からないようになっているから特に何の問題もない。
席につき、立っていた疲れのままに机に突っ伏す。
そうすると周囲の音が自然と耳に入ってくる。
盗み聞きがよくない事だと知った今でも、周囲を観察するのは何年たっても変わらない癖だ。
だけどそれが必ずしも私にとって良いという訳でもない。
ワイワイと話す人たち。それはただうるさいの他ならない。
女子の時々上がる笑い声は同じ女子でも耳を思わず塞ぎたくなる。
こう思う人は多分少なくないだろうけど、私は自分でも少しずれているな、と自覚していた。
ずれていると自覚しているから偶に普通の感性が分からなくなる。
それは小6で気付き未だに辛く、それでいていいでしょ、と謎に自慢げに思う自分がいる。ただそれを表に出すようなことは絶対にしてはならない。周りからウザがられてしまう。
だから今まで普通に振舞っていた。心を殺し、笑い方を変え、話し方もぶりっ子と思われないような口調にし、周囲の人とあまり変わらないようにしてきた。
普通じゃないことは辛いのだとその時に知ったから。
だけど今年は同じ価値観…いや、相手はメンヘラだから私と全然違うのだけど、それでも恋愛観は似ていた。
だから段々と昔の自分に戻っていった。
どれくらいの自分を見せて大丈夫かと調整していたらそうなっていた。
あり得ないぐらいのテンションの維持と、絶えない笑顔。抑制できないぐらいの感情の振れ。
不安にならないわけがない。このせいで私は周囲の人に嫌われたのだから。
だからまた心を殺していかないとな、と。
愛する人からのラインを見ながら思う。唯一見つけたヤンデレの人は私が今生きるたった一つの理由だ。
私は親友に裏切られて以来自分の命はないに等しいと思っている。
だから簡単に死という言葉を使うし、自覚もしばらくたってからだったから何故みんな好きな人に愛を命で語らないのか疑問に思ったこともあった。
ああそうだ、私が自分をズレているというにはもう一つ理由があって、私はここまで言っておきながら博愛主義者な面がある。
誰かが困っていたなら迷わず手を差し伸べるし、正義感が強いから弱い位置に立っている人なら誰彼構わないだろう。それこそ今までに私を裏切ってきた人でも。
私を裏切ってきた人は今までに五人ほど。その人たちはネットリアル問わない。
隣の男子が座り、思考に没頭していた私の目の前で手を振る。
少し男女の境目が無いような絡みに不快感が募るも一瞬にして消え、パッと今まで考えていた闇など嘘のような笑顔に変わる。
そう、反射的に。自分でも気味が悪いと思ったことは数えきれない。
「ねー、今日あ〇もりのアプデって知ってる?」
人と触れ合うのが好きなくせにストレスはたまってく一方の私は、今日もコンプレックスな自然アニメ声で話しかける。
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