第7話 人生逆転の兆し
そう言えば、私の頭の中はすっかりスマホのことで一杯だったけど(そしてミラちゃんのことで相当混乱させられたけど)、スマホを手に入れた今はおばあちゃんに何か美味しいものを食べさせてあげたい。
おばあちゃんの好きなものって何だっけ?
今までは全然手が出せなかったけど、確か甘いものが大好きだったはず。
年配の人にも好評なスイーツを何個か買っていこうかな。
あ、でも余分なお金がないや。
手持ちのお金は全部何に使うか決まってるし······。
よし、貯金しようと思ってた分を降ろそう。
2000円は口座に残しておいたからね。
貯金は次回からね、頑張るよ。
「ファッ!?」
ATMでお金を降ろそうと思ったら、また変な声が出てしまった。
いやいやいやいや、えっえっえっ?
何コレ何コレ何コレ?
『残高:5804円』
確かに2000円残してあとは全部降ろしたはずなのに······。
新手の振込まれ詐欺?
そんなの聞いたことないけどあるのかな?
『あゆみ、このお金は「押し貸し」のような詐欺ではありません』
あ、そんな詐欺あるんた。
『これは昨日「DLモード」であゆみが稼いたゴールドを1ゴールド=1円に変換して振り込んだものです』
えっ? えっ? えっ?
そんなことある?
そんなことしてたらゲーム会社やってけないよ?
『ちなみに、お金に関してはゲーム会社からではなく、あゆみの資産から捻出していますから安心して下さい』
私の資産?
そんなもの欠片も無いけど?
『口座に入っていた2000円を元手にFXや株の取引で増やしました』
ちょっと、こら! 人の金で勝手に何やってくれてんのよ!
本当にありがとう!
ミラちゃん優秀!じゃんじゃん増やしちゃって!
で、全部でいくらあるのかな?
『総額を伝えるとあゆみの人生を駄目にしかねないので今後も開示することができません。また増やした資産は「DLモード」で稼いだゴールドの分しか口座に戻しませんので悪しからず』
え? 私のお金なんでしょ?
『名義上は紛れもなくあゆみのお金です。しかし既に2000円は返してますし、私が増やしたお金でもあります。増やした分はあゆみのゲームへのモチベーションを上げるために用いるということで了承してください』
まぁ、いいか。
確かに私が自分で稼いだお金じゃないしね。
感謝こそすれ、文句を言うのは筋違いだ。
おばあちゃんも、「貧乏だからって金の亡者になっちゃいけないよ。幸せが逃げてくからね」って何度も教えてくれた。
ありがとね、ミラちゃん。
『いえ、ご理解頂けてよかったです』
でも、お金をもらえるのってって私だけなの?
『はい、それだけ「DLモード」プレイヤーは貴重なのです。あゆみの持つ可能性は計り知れません。あゆみの価値に比べたら些細なものです』
そうなの?
いやぁ、照れますなぁ〜。
よし、こうなったらゲームしまくったるぅ!
「あゆみ氏、大丈夫でござるか? ATMの前で変な声出したり、ニヤついたり、ちょっと変な人になってたでごさるよ」
いやあああああああああ!
見られてたあああああああ!
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