砂上の幻
ぴのっ
宿命の星
北の穹を星が流れた。微かに息をするように瞬く、小さな星。
彗藍は氷のように美しく冴えた双眸にわずかに憂いを滲ませる。
砂金のような凡庸な光が無数に瞬くなか、燐の光は細く途切れた。
「ほう、久方ぶりじゃの」
息を呑むような美貌の紅の君が、面白そうに唇を歪ませた。
「不憫な宿業を背負っておる」
憐花の愉しげな口ぶりを、彗藍は白皙の顔をしかめて非難した。
「悪趣味だろう。そなたの玩具ではないのだぞ」
「こなたがなんぞ佳からぬことをすると?心配か?」
揶揄うような口ぶりでこちらを見やる憐花を、忌々しそうに軽く睨むと、彗藍は地上に視線を落とした。
皇城は夜も煌々と明るく、花街は男を誘うようにきらきらしく艶やかである。
花を売りましょう、と衣を袢けた女が婀娜っぽくきゃあきゃあと声を上げている。
白蘭楼の女郎房の片隅で、女の押し殺したような呻き声と共に赤子が小さな産声を上げた。女児であった。
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