第30話 ぼんやり筋肉
「よーし! 今日の手伝いも終わったし、遊ぶぞ~!」
翌日、海の家の手伝いが終わって開放された俺達は、再び海に遊びに出かけていた。そんな中、俺は昨日ほとんど寝れなかったせいで、あまり元気がない。
寝れなかった理由? そんなの、俺は東郷さんの事をどう思ってるのか、東郷さんは俺の事をどう思っているのか考えていたからだ。答えなんて出なかったんだけどさ。
「雄太郎くん、今日はなにして遊ぶ?」
「…………」
東郷さん、今日も水着が凄く似合ってる。それに、その上目遣いで見るの、凄く可愛い。そう思うと、なんだか体と胸の奥がムズムズするというか、ソワソワするというか、とにかく落ち着かない。
くそっ、なんだこのムズムズ。最近よく起こるんだが……そのせいで、東郷さんの顔がまともに見れない。ていうか、昨日よりも何倍も悪化してる気がする。嫌な気分ではないんだけど、とにかく落ち着かないんだよ。
「雄太郎くん?」
「あ、ごめん! ちょっとボーっとしてて」
「……雄太郎くん、今日ずっと変だよ? 仕事中もボーっとしてたし……調子悪いの?」
「おにぃ、無理は駄目だよ!」
「ありがとう、俺は大丈夫だよ」
二人の優しさは嬉しいけど、流石に寝れなかった理由が理由なだけに、口にするのはちょっと恥ずかしい。うまく誤魔化して乗り切ろう。
「それならいいけど。それじゃ美桜はまた一人で泳いでくるね!」
「美桜ちゃん、一緒に遊ばないの?」
「お二人の邪魔できませんからね。おじゃま虫は退散って事で! 美桜とはまた夜に遊んでください! ではでは♪」
そう言うと、美桜はニシシ~と笑いながら去っていった。
邪魔って……美桜が何か俺達の邪魔になるような事があるだろうか? 生憎だが、全く心当たりがない。
そんなことよりも、だ。問題はこっちだ……。
「もう美桜ちゃんったら……それじゃ雄太郎くん、私達で遊ぼっか! えへへ~楽しみだなぁ」
「あ、ああ……」
ああくそっ! くそっ! 本当になんなんだこれは!? 東郷さんを見れば見る程、症状が悪化する! 特に東郷さんの笑顔が一番顕著だ! めっちゃドキッとするんだよ! なんだこれ意味がわからない! ドキッってなんだよ!?
何度も言うが、全部嫌なものじゃない! そ問題なのは、こんな事が起こる原因だ! 原因が明確にならなければ、対処のしようがない!
「えへへ、今日は海の家から浮き輪を借りてきたから、沖まで一緒に行きたいな」
「沖か……遠くに行きすぎるのはアレだから、俺の足がつく範囲までなら大丈夫」
「やったー♪ すっごく楽しみ!」
嬉しそうにぴょんぴょん跳ねて喜ぶ東郷さん。もう可愛すぎて見てるだけでソワソワとドキドキが収まらないんだが? もしかして俺、そろそろ死ぬんじゃね?
「それじゃ沖に……って、雄太郎くん?」
「……大丈夫かなあれ」
もう帰るのか、パラソルの片付けをしようとしているおじいさんが目に入った。
あれ……確か昨日海の家に来ていたおじいさんじゃないか。さすがにあの歳でパラソルを片付けるのは、見てて怖いな。腰とかやらないだろうか?
「ちょっと行ってくるよ」
「あ、私も行くよ!」
「うん。あのー、すみません」
「むぅ? おや、海の家の店員さん達じゃないですか。ワシになにか御用かな?」
「用というわけではないのですが、パラソルを片付けるのに苦戦してるのが見えたので、もしご迷惑じゃなければお手伝いしますよ」
「いいんですかな? それは助かりますわい。この歳になると腰がつらくてのぉ……」
「あまりご無理はされないでください。お孫さんが悲しんでしまいますよ」
俺はおじいさんからパラソルを受け取ると、手際よく片付け始める。こういうのにはちょっと慣れてるんだよね。
「おにーちゃん、やってくれるの?」
「そうだよ~おにーちゃんは凄い人なんだよー」
「すごいひとなの!? へー! ヒーローみたい!」
東郷さんがお孫さんの相手をしてる最中に、俺はパラソルの片づけを全て終わらせてしまった。想像よりも早く終わってよかった。
「助かりましたわ。このお礼は……」
「いえいえ、お礼は受け取れません。俺達はこれで失礼します」
俺は東郷さんと一緒に頭を下げてから、自分達のシートの上にある浮き輪を回収するために戻ってきた。
「よ~し、浮き輪装着! これで完璧だよ! さあ海にレッツゴー!」
「ははっ、テンション高いね」
「うんっ! 雄太郎くんと沖に出るの、楽しみで楽しみで!」
「それは、俺と出るからなの?」
「え、当然だよ! 他の人となんて興味ないし? ほら、変な事言ってないで行こっ!」
しびれを切らせた東郷さんに手を強く引っ張られて、俺は沖に向かって歩き出す。
他の人なんて興味なし……それって、俺とだけは楽しんでくれるって事なのか……? それってつまり、東郷さんは俺の事を……異性として……?
だぁぁぁぁ!! わからん!! こんなの友達でも言えるじゃないか! どうすれば明確に恋愛と友情を分けることが出来るんだ!? 誰か教えてくれ!
■美桜視点■
こんにちわ! こちら、おにぃと司先輩を応援する隊の隊長、美桜です!
二人と別れてからこっそり観察を続けていたけど……なんだかおにぃの中に変化があったような感じだね! もしかしたら、これは進展のチャンスかもしれない! 逃す手はないよね~! ふふっ、しっかりスマホで記録して、付き合った時に記念として見せてあげよ~っと♪
って思ったら……なんかおにぃがおじいさんのパラソルの片付け始めたぞ? またそういうお人好しな事をして……まあ随分とお歳を召してる感じだし、手伝うのはさあ……偉い! さすがおにぃ! それに司先輩がうっとりした目で見ている! これは高得点間違いなしだぁ!
さて、パラソルの手伝いも終わったし、あとは浮き輪を持って二人で大海原へ……はぁ? なんかあのウザいギャル二人が司先輩の浮き輪に何かしてるんだけど!? と、とにかくあいつらも撮っておこう!
「さっき見てたけど、これに穴をあけておけば……大変な事になるっしょ! ウケる~!」
「だな! 慌てふためくのが目に浮かぶわ~ギャハハハハ!」
あっ逃げた! 会話の内容からして、あの忌々しいギャル二人が、浮き輪に穴を開けたって感じかな……って、おにぃが気づかないで持っていっちゃったよ!? しかも司先輩が使ってるし!
う~どうしよう……あれじゃいつか浮き輪の空気が無くなって……あっ! もし何か問題が起こったら、おにぃが助けて司先輩の好感度爆上がり、それと一緒に鈍感筋肉なおにぃも、司先輩を女子として意識させられるかもしれない。
ピンチは最大のぉ~……チャーンス!! 一気にお近づきになってもらうためにも、ここはグッと我慢して見守るのよ美桜! おにぃは普通に泳げるし、きっと大丈夫なはず!
今の美桜に出来る事は、現場を押さえたこの映像を使って、ギャル二人に……おにぃと司先輩の邪魔する奴らにお仕置きをしてやる! そうと決まれば、更に証拠を集めるために、あのギャル達を追跡っ!
――――――――――――――――――――
【あとがき】
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