2話 お勉強のごほうびは、ちゅーがいい!

「おわった〜!」とリアが嬉しそうに両手を上げる。

 

「お疲れ様です〜! さすがお嬢様、早く終わりましたね〜!」レミほめる。

 

「はやくね? まだ40分しかたってないじゃん」私、スイは言う。予定では一時間かかるはずだった。

 

「ふい〜、私もおわったぁ……」リコもペンを投げ出しながら言う。こっちは長くて30分で終わる量だった。私は20分で終わったけれど。

 

 

「ごほうび、ほしいな」ぽつり、とリアはつぶやく。

 

「頑張ってくれましたし、いいですよ〜」レミはにこにことこたえる。

 

「わたしもほしい〜!」とリコは私に抱きついてくる。

 

「えー頑張ったのは認めるけどリコはむしろ遅いじゃん〜」と私はしぶる。 

 

「なんのご褒美がほしいです〜? だっこ? 頭なでなでですか〜?」そういいつつ、レミはリアお嬢様の手を優しくにぎる。

 

「ちゅーしよ〜!」レミの手を握り返しながら、ぱあっと明るく答える。

 

 ばっ。私達は身体を止め、一緒にそちらを見る。

 

「もちろんいいですよ〜!」にこにこと笑いながら、レミは返す。

 

 ごくり。リコがつばをのむ音が聞こえた。ちらとそちらを見ると目を輝かせている。

 

 レミとリアのキスシーンのを見るのは私もリコも大好きだ。あんまり凝視してはいけないんだろうけど……つい見てしまう。

 

 レミはお嬢様の肩をそっと掴み、抱き寄せる。そして髪をなでなでする。そのまま手をおろし、のどからあごの下をすりすりとする。

 

「にゅ〜」とお嬢様は心地よさげな声を出していた。こねこみたい。

 

 レミのキスも、昔と比べてずいぶんと大人になったなぁ。最初はすぐに口づけをしていたけれど、今はこうやって落ち着きながら、ゆっくりと時間をかけてキスをするようになって……。

 

 ほっぺを両手で包み込み、ふにふにする。そして……自分の顔をリアの小さなお口に近づける。

 

 ごくり。私もつい、つばを飲み込んでしまう。

 

 ぽおっ、とほっぺを赤らめたお嬢様は……目をつむる。ちゅーを受け入れるために。「ん」と少しくちびるを前につき出す。

 

 そろそろと、ふたりのくちびるが近づき……ちゅーをす……。ぴたりと、レミの動きがとまった。

 

 ほんの少し首を動かし、私達の方を向く。私と目が合う。そしてリコとも目を合わせる。はっ、と見られてるのに気づく。かああっ、と顔が赤くなる。そして……うつむいてしまった。

 

 そっか。みられてたら、はずかしいよね。私だってリコとキスしてるのまじまじと見られたら……照れちゃうし。

 

 リアは待っているキスが来ないので目を開け「の?」とくびをかしげていた。「ちゅー、してくれないの?」と少し不満げだ。 

 

「あっ、ああ、すみません……ちゃんとちゅーします……しますけれど」少し慌てたようにレミは言う。

 

「けれど?」

 

「こちらに……きてください」リアの手を取り、立ち上がる。そして端っこにある柱の裏に連れて行く。柱と言ってもそんなに太いわけじゃないのでふたりの顔がちょうど見えなくなる程度で、身体の半分ははみ出している。

 

「立ってちゅーするの〜?」

 

「はい。いきますよ」


「ん〜」「んんっ」ちゅ、とくちびるが触れ合う音が聞こえてくる。

 

 ……見えないキスもいいなぁ。これはこれで想像がかきたてられる。まだ知らないだろうけど、舌をからませてちゅーとかしてるのを考えちゃう。

 

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