7話 レミのHappy Birthday

 

 

「ふぇ?」突然の出来事に、私はぽかんとしてしまう。

 

 メイド部屋にはお屋敷中のメイドが勢揃いしていた。おおよそ三十人ほどだろうか。その皆が私に向かって笑顔で祝福してくれていた。

 

「おめでとう!」斜め後ろからスイにぎゅっと抱きつかれる。

 

「あ、スイずるっ! 私もやる」もリコも反対側から抱きついてくる。

 

「こ、これ私のために……?」私は周りを見回しながら

 

「そうだよ〜」「ほらほら主役はこちらです」とリコとスイに両方から抱きかかえられ、私は部屋の真ん中にある五人掛けのソファーに座る。リコとスイは私を挟むように左右に座る。

 

 

 目の前のテーブルにはフォークとナプキンが置かれていて、まるで今から食事をするかのように。

 

「レミ」私の前に歩いてきたのはメイド長だった。

 

「はっ、はい」私は反射的に背筋がしゃきんと、伸びてしまう。

 

 メイド長はつねに鉄の仮面をつけてるような無表情で、変えるときはメイドのそそうに対して厳しく叱るときの怒りの表情しか見たことなかった。

 

 だから見習いメイドだった私はいつ怒られるんじゃないかとびくびくしていた。幸いにも、怒られたことはまだ一度ももなかったけれど。

 

 でも、そのメイド長が。無表情の鉄仮面が。にこりと口角を上げて私に笑いかける。目元も心なしか笑っているようだ。

 

「お誕生日、おめでとう」口調もとても優しく、まるで別人のようだった。そして両手に持っているケーキを、私の前に置いてくれた。火のついたロウソクが十本。そして「Happy Birthday Remi」と書いてあるチョコのプレート。

 

 そして、メイドのみんなが合唱しはじめる。

『ハッピーバースデートゥーユー♪ハッピーバースデートゥーユー♪ ハッピーバースデーディアレミちゃん〜♪』

 

 私は息を吸う。『ハッピーバースデートゥーユー♪』最後の合唱にあわせて、ロウソクに息を吹きかける。

 

 ふーっ。十本のろうそくは、きれいに吹き消された。

 

「「「「誕生日おめでと〜!!!!」」」」みんなの祝福が、部屋の中にこだまする。

 

「ありがとう……ございます!」とってもうれしくて、私は大声で感謝を伝える。喜びで胸がいっぱいになる。

 

 こんなにたくさんの人に祝われたことなんて……初めてだった。誕生日がわかんないときも、年に一度だけ、何人かのメイド達に祝ってもらっていたけれど。

 

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