3話 レミは一人前のメイドです!
「誕生日おめでとう」そう、耳元で囁かれる。
「ありがとうございます」誕生日を祝ってもらうのははじめてだった。……というより、最近になって自分の誕生日が判明した。
「そうそう、プレゼントを用意したわ」
「えっ、これがプレゼントでは」
「抱きしめるのが? あはは、そんなわけないじゃない。抱きしめるのは立派なメイドに成長してくれた、ごほうびよ」
「そんな、私はまだまだです……」
「そう、見た目はね。けれど中身は一人前のメイドよ」私は見習いの証である青いメイド服を着ていた。一人前と認められると黒いメイド服を着ることになっている。普通はメイドになって一、二月ぐらいで一人前になれるんだけれど……私は若いからか、二年も見習いのままだった。
「だからね、これをあげるわ」母様はきれいに折りたたまれた黒いメイド服を渡してきた。
「い、いいんですか?」
「もちろんよ。ちゃんとレミの身体に合わせてオーダメイドしてあるわ。着てみて」
「はい、ありがとうございます! とってもうれしいです!」早速私は自分のメイド服を脱ぎ始めた。
「……ふふふ」母様はそんな私を見て笑い出す。「目の前で着替えるのね」
「あっ! すみません、嬉しくってつい……」下着姿になった私は顔を赤らめる。
「そこまで脱いじゃってるなら、着替えちゃいなさい」と母様は新しいメイド服を広げて、私に着せてくれた。「大人になったなと思ってたけれど、そういうお茶目なところはちゃんと子供ね」
「うう……すみません、早く大人になります」私はしょんぼりしてしまう。
「いいのいいの。無理に背伸びなんてする必要ないわ……やっと二桁の年齢になったばかりなんだから、レミはまだ子供でいていいのよ」
「そう、ですか……?」
「そう。だから私の前ではあまえんぼレミのまんまでいなさいね」母様はぽんぽん、と頭にやさしく手をおいてくれる。
「はい、わかりました」こくり、と私は頷く。母様の前では、素直になろうと決心する。
「うん、服のサイズはぴったりね。とってもよく似合ってるわ」私を見つめ、満足そうに母様はうなずく。
「ほんとですか! わあぃ!」私は嬉しくてつい、くるくると回ってしまう。
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