第6話 奴隷の覚悟
割り当てられた部屋に通され中を見ると、12畳位の部屋にダブルベッドがひとつ、そしてクローゼットとちょっとした机と椅子がある。そんな感じのシンプルな部屋ではあるが、絵画が飾ってあったり、調度品は高級品である。またちょっとした食器棚がありそこにはカップやポット、茶菓子があった。
そしてベッドの上には着替えが置いてあるのが分かる。自分の分と、奴隷の分だ。床には奴隷用の履物が置いてあるのが分かった。また、召喚された時に着ていた衣服がきちんと畳まれて置いてあった。それと荷物も。三郎の場合、宿の部屋から海に飛び込む時、浮き代わりにしようと咄嗟に背負った女の子のデイバックとその中身だ。
部屋の隅には手桶とタライがあり、そこに水が汲んであるのが分かった。そして三郎は困った。年頃の女の子と二人きりなのだ。しかもコートはもう脱いでおり、胸が見えそうで見えない、そんな感じの服であり、胸の形もはっきり分かる。聖哉が連れて行った女の子程ではないが、この子もそれなりに胸があり、見た目も美しいのでドキドキしていた。
「あのう、とりあえず目のやり場に困るので、用意して貰った服に着替えて貰えませんか?」
「はい、畏まりましたご主人様」
と言いその少女はその場で服を脱ぎ去った。乳首に貼り付けていたニップル?パッドも取っていた。胸にはパッドが貼ってあり乳首が見えないようにはなっていたのだが、後で理由を聞かされたが、基本的に高級奴隷はご主人様のお手付きがあるまでは、他の男に胸をと言うか乳首を見せない事になっている。勿論自分の乳首を見た男の人はご主人様が初めてですとも言っていた。ただああいう服で胸の形がはっきり分かる物を着せられているのは、自分が惨めな奴隷であるという事を弁えさせ、周りにこの者が奴隷である事を知らしめる為のパフォーマンス的な事だというのを知るのはこの後の事であった。
「ああ、それで見えそうで見えなかったのか」と心の中で突っ込みを入れたが、えっとなった。裸の少女が目の前にいるからだ。
そこには見事な裸体があった。汚してはならない清らかな美しい裸体だと一瞬見惚れたが、慌てて三郎は背中を向けた。
「ご、ごめん。その後ろを向いているから服を着て」
はいご主人様と言っていたが、三郎に追い打ちをかけてきた。
「それでは服を着る前に検品をお願いします」
「えっ?よく分からないけど、それをするから、先ずは服を着て!」
畏まりましたと、不思議そうに服を着ていた。
履物も用意されており安心したが、彼女は今まで裸足である。用意されている服は簡単なワンピースで、腰紐で止めているだけの膝丈までの清楚な感じだ。検品は奴隷を購入後、丸一日以内であれば返品できる。購入時に聞いていない看過できない不具合があったりしたら返品か交換を主張できるので、購入した奴隷について速やかに検品するのだ。そのまま流れでお手付きが入る事も有るが、慣れている者は慌てず、半日は様子を見ると言う。お手付きはこの奴隷は問題ないとして受け取ったとされ、返品不可になると言う。
彼女の言う検品をしないとこの子は自分が返品されるのではないか?と不安がると思い、納得した訳ではないが彼女の精神の安寧の為それっぽい事をした。
服を着た状態でぐるっと体全体を見渡し、脚や手、お腹を少し触ったり押したりした。そして瞼を触って眼球を見たり、口を開けさせ、歯並びを見た。これで検査をしたと思ってくれるよね?と。そして問題ないよと告げたが、女の子の体をべたべたと触っていたので真っ赤で狼狽えていた。
やはり首に目をやると奴隷の首輪チックな紋様が気になる。触っても何もないのだが、そこには紋様が浮かんでいるのだ。首をスカーフ等で隠しても無駄だ。当人からは見えないが、周りからは目立つ。頭の大きさ位の大きさでうっすらと光って見えるからだ。ただ、その者が奴隷だと分かった段階で光の輪はその者からは殆ど見えなくなる。
彼女は三郎の慌てぶりに?だった。これから自分はこの人に抱かれるのだ、純潔を散らされるのだと覚悟し開き直ってもいた。だが服を脱いだところで慌てて背中を向けられ、謝られまでした。また検品も普通は陰部を念入りに見たり触ったりすると聞いていた。しかも、商品説明通りの生娘だと確認できると我慢できずに押し倒されそのまま・・・を予想していた。しかしされたのはどう見ても医者がするような健康チェックのみだった。胸を触っても来なかった。と言って女に興味がないようには見えなかった。
先ほども自分達の着ているものを見て怒っていたようだが、正直理解できなかった。なんなんだろうこの人は?そういった感じで、不思議な方だなと。
彼女は本来1ヶ月後位に奴隷オークションに掛けられ、そこでお前のご主人様が決まるそう言われていたのだ。だが寝ている所を急遽起こされ、城に行くぞと言われた。馬車の中で興奮気味の奴隷商からひたすら言われていた。
「お前達は運がいい。なにせ勇者様の奴隷となるのだ。勇者様はおひとりさまと聞いていたが、3人のようだぞ。だからお前達を急遽出荷するのだ。よくよく尽くし、勇者様のご寵愛を賜るのだな。お前達の幸せはご主人様より如何にご寵愛を賜れるかによるのだからな。そして勇者様に尽くし子を産め!儂が言うのもなんだがな、どの時代でも勇者様は女に人気があるのだ。本来買っていく変態貴族よりはマシだと思いますぞ!そして母となれば、その子の為に捨てられる事も少なくなるであろう」
子を産めとはこの奴隷商なりの親切心だった。子には母親が必用だ。自分の子の実母を奴隷として売り払う者は少ない。運が良ければ政略結婚の状況程度に収まる。運もあるが、奴隷の振る舞い次第である程度だが自分の立場を良くできる可能性があり、それを伝えたかったのだ。
自分は見目麗しく、奴隷として売られたならばその日のうちに純潔を散らされる。そしてその主人の慰み者の女にされる。そう聞かされていた。奴隷とはそういうものなのだろうと覚悟はしていた。その為、この若い主は即時欲情するとしか思えなかった。若く、先程の立ち回りから武芸に長けており、確かに成長すれば英雄になる可能性を見て取った。そして英雄色を好むの諺通りに発情し、部屋に入り二人きりになった瞬間に押し倒され、惨めに犯されるのであろうと。
しかしこの男は手を出して来ない。それどころか変わった行動を取ってきた。裸体をまじまじと見ても良いのに、服を脱いだ途端に慌てて背を向け、謝りさえされた。そして着替え終わった自分の検品というより、健康チェックをした後、自分の事を見てうんうんと頷いていたので戸惑っていたのであった。
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