『布』の話

玉井冨治

第1話

ぼくは、動物で例えたらヒヨコである。

身長は150センチメートル位。

そう、ぼくはぬいぐるみなんだ。

ぼくは大きいし、大きなヒヨコなんてしっくりこないものだから、この倉庫から中々出ることが出来ない。

ぼくの仲間のネコやらイヌやらクマやらは早々にどこかへ行ったのに。

何故か、ぼくだけがここに残っているのだ。


ぼくには名前がまだない。

まだ誰の元にも行ったことがないから。

そもそもぼく達ぬいぐるみに名前を付けてくれる人など、そんなに居ないのだけれども…。

ぼくのご主人さんになる人はきっと、名前を付けてくれるんだ。

きっとそうなんだ。


ある日。

ぼくは店員さんに連れて行かれた。

その男は背が高くて、顔も良くて、いい匂いがした。

髪の毛の色は黒、肌の色は少し白い、眼鏡の縁は黒、少し筋肉質。

きっと、ぼくの行き先が決まったんだ。

ぼくはどんな人のところに行くんだろう?

楽しみだな。

ぼくはふわふわした素材の大きな袋に入れられた。

ここは居心地がいい。

でも、色々なものが入って窮屈になるはずが全然そんなことなかった。

寧ろ、暖かい風が吹いてきて段々眠たくなってきた。


あ、そういえばさっきの人は倉庫に来る度にぼくの頭を撫でてくれて、いつも話しかけてくれていた人だっけ?

見た目に反することをするものだと思っていたんだ。

あれ?

結構明るくなってきたな。

何だろう?

外に出たっぽいな。

ぼくを買い取るような声は全く聞こえてきてないのに…。

もしかして…ぼく、捨てられちゃうの!?

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