ワールドブレイカー
サンサソー
異物は消えるべき。そうでしょう?
世界。
それを人間が知ることは不可能。
どれほどの大きさ?世界であることの定義は?どんな要素がある?
全部知ってる?知らないよね?だから、こんなことをするんだよね?
異世界転生、異世界転移。
魔界や天界のような異界とは違う、何もかもが異なる別世界。
そこから来訪し、活動するのが転生者。または転移者と呼ばれる者たち。
既存の世界に土足で上がり込み、定められた運命を乱し、破壊していく傲慢極まりない異物。
人と話すだけで、物を食べるだけで、空気を吸うだけで、それだけでも世界のあるべき姿を捻じ曲げている。
本来なら、その時、その人は話すことは無かった。その食べ物は食べられることは無かった。その空気は吸われるものでは無かった。
そうあるべきでは無い事が起こるという矛盾。それが積もりに積もるとどうなるか?
必ずどこかで、世界に存在しないはずのバグが生まれる。
バグが発生した世界は、あるべき姿を歪められた世界はゆっくりと崩壊していく。異世界の者たちが死んでも、それは止まらない。
入ってきた時点で、崩壊は避けられない確定事項となるのだから。
パラレルワールドもダメだよ。もともと選択肢はあるけど、どれを選ぶかは既に決められてるんだから。
自分の意思で決めたようで、それは元からそうあるべきなんだから。
1と1を足せば2になるように。下手な妨害や、別の解釈が無ければの絶対。
世界も同じ。もしもを映すIF世界。パラレルワールドと呼ばれる、本元の世界を模倣した贋作。
そんなものが数多に存在したら、本元の存在や解釈もあやふやなものとなってしまう。
本元である世界をリソースとするパラレルワールドが増え続ければ、本元は埋もれてしまう。
隙間なく埋もれ、やがて間違った解釈や認識をされてしまえば、本元の世界は消滅してしまう。異世界人の干渉によるものと同じようなものだ。
繋がりあったパラレルワールドも、本元を無くしたことで力を失い消滅する。原本が無いのに、もしもを作れるはずもない。
そんなの、元の世界の人々にとってはたまったものじゃないよね。酷いよね、恨めしいよね。
なら、異物は排除しなきゃ。壊して……また作らなきゃ。
ボクが何を言ってるか、わかる?理解できる?
できなくてもいいよ。簡単に言ってしまえば、異世界人とIF世界を壊すのがボクの仕事ってこと。
それが、元転生者だったボクにできる唯一の償いなんだから。
「大丈夫ですか!?何か怪我は!?」
「あ…ああ……」
「しっかりしてください!大丈夫、あなたは崩壊に巻き込まれていません!」
「崩…壊……?」
「……はい、あなたが暮らしていた世界は崩壊しました。大昔から積もりに積もった物に、世界が耐えられなくなったんです」
「……何が積もってたの…」
「……異世界の者たちは本来、運命の流れに組み込まれていません。魂も別世界のものですから、完全に適合も出来ません。それによって、流れは変えられていき……永い時を経て、崩壊へと…」
「……そっか。なら、ボクのせいだ」
「それは……」
「違わないよね。ボクが、トドメを指したのも同然だもん。世界を壊す力なんて……こんなの、持っちゃいけなかったんだ。世界の力の絶対量を上回って……きっと、ボクが元いた世界からも奪ってるんでしょ?」
「はい……あなたの世界から急速に力が失われつつあります。直に、これも崩壊するでしょう…」
「……この力は、捨てたとしても世界には戻らないよね。もう崩壊しちゃったんだから」
「そうですね…世界の狭間にある混沌に飲まれるだけです」
「こんなの、もう使いたくない……でも、ボクはすべきことを見つけたよ」
「すべきこと……ですか?それは…ゴブッ!?」
「だから、あなたの力を貰うね……キミの魂も連れて行くよ。一人は寂しいからさ」
「なに……を…」
「ボクは壊すことにしたよ。ボクみたいな異物を。でも世界を救うためにはそれだけじゃ足りない。だから、あなたの力も必要だ」
「ま…待って……」
「ボクはもう知っちゃったんだ。こんなこと、他の世界には起こって欲しくないから……ごめんね、神様」
「ボクみたいな異物は全部消えるべきだ。それが正しくても、間違っていても……世界が救われるのならば」
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