十志物語

伊勢日向

 一九五〇年、エンリコ・フェルミが「宇宙人はどこにいるんだ?」と疑問を呈する以前に、宇宙旅行の父と呼ばれるコンスタンチン・ツィオルコフスキーは「地球外文明は、人類が独力で進化するため、放置している」と考えていた。

 また、ツィオルコフスキーは「地球は揺り篭である。しかし、人類はいつまでもこの揺り篭に留まってはいないだろう」という言葉も残している。

 このハイブマインド・クロニクルで語られる世界線の人類も、巣立っていく運命にあるが、今しばらくは、揺り篭の中で未来を育むことになる。


    ◇ ◇ ◇


    大 進 化 令


 この我々の宇宙は、全なる宇宙の一つである。

 そして、一つの宇宙と一つの宇宙を結びつけているのは我々が魂と呼ぶ存在である。


 魂は全てをつなぐ根本であり、古き時代より伝説を通して人の世に根付いている運命の糸になりえるものだ。それは願いであり時に信仰ではあるが、誰しもが直感的に存在することを知っている。


 運命の糸が、人と人とをつなぎ、世界を網羅する時、地球人類は新たな境地へと踏み入ることができるだろう。だがそれは、遥か未来の、微かな可能性の、分岐の一つでしかない。


 超高度知的生命体との邂逅を経た今、我ら地球人類は着実な進化が必要となった。進化せねば確実な滅亡が待っている。


 猶予は三〇〇年。

 進化とは何かを全地球人類が考える時だ。


 刮目せよ、宇宙の寵児を。


             二〇一六年九月二五日

              進化向上委員会 代表 平賀烈士










 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る