ゼロ距離な彼女。〜親ガチャ再抽選でSSR美人おねーさん姉妹との同居生活が確定しました。距離があまりに近すぎてHPが一桁です。〜

かなたろー

第一章

第1話 ゼロ距離な家族。

「父さんと母さん、離婚したから」


 17歳の誕生日、俺は結構なイベントに遭遇した。それも結構なベリーハードだ。


「もう、お互い再婚相手も決まっていて、新居もある。すすむは父さんと母さん、好きな方についてきなさい」


「い、いきなりそんなこと言われても。ちょっと考えさせてくれ」


 17歳の誕生日のプレゼントとしては、かなり取扱注意な代物だ。


「答えを出すのはいつでも構わない。ただ、もうこのマンションは引き払ってある」


 ピンポーン!


「はいはーい」


 母さんがいそいそとインタホンに返答すると、インタホン越しに体育会系な元気な声が聞こえてくる。


『どーもぉー。信用第一! アリクイマークの引っ越しセンターです。かぞえ様のお宅でしょうか?』

「お待ちしておりました。すぐにはじめてください」


 母さんがほがらかに返事をすると、体育会系の人たちは、さわやかな笑顔をまきちらして、だけど汗臭いにおいもまきちらしてドヤドヤと入り込んできた。


 しかたがない。


 今日はまだ8月だ。8月31日。35℃を超える酷暑日だ。こんな日に引っ越しを手伝っていただけるなんて頭が上がらない。ありがとうございます。


 俺の家は、エレベーターのない築四十年の五階建てマンションだ。

 そんなオンボロマンションの最上階にある2LDKにこじんまりと収まっていた家財道具は、瞬く間に2トンのロングトラックに詰め込められた。そしてブルンブルンと走り出して、俺たちはタクシーに乗ってそのあとを追っていく。


 前を走る2トントラックは、なぜだか高級住宅街のおっきな家の前に停車した。

 2トントラックは止まるやいなや、体育会系の人たちはテキパキとトラックからおりて、テキパキと荷物を運んでいった。ありがとうございます。


 お父さんは、タクシーを降りると俺に向かって言った。


「さあ、ここが、みんなで住む新しい我が家だ」


 そして母さんも俺に向かって言った。


「さあ、今日からここで一緒にくらしましょう?」


 え? どういうこと??


 話がおかしい。ずいぶんとおかしい。さっき、父さんと母さんは離婚したと言った。そして再婚すると言った。そして父さんと母さんはここに引っ越してきたと言う。俺は、思った事をそのまま口にした。


「え? どういうこと??」


「そう言うことさ。ここは、父さんの再婚相手のお宅だ」

「そう、そして母さんの再婚相手のお家よ」


 ちょっと意味がわからない。ずいぶんとおかしい。俺は、思った事をもう一度そのまま口にした。


「え? どういうこと??」


「だから、お父さんはこの家に住んでいる女の人と結婚する。お相手もバツイチだ」

「お母さんはね。この家に住む人と結婚するの。お相手はバツイチよ」


 えっと、つまりは……?


「父さんと母さんは、この仁科にしなさん夫妻と、パートナーを入れ替えることにしたんだ」


「え! どういうこと??」


仁科にしなさんは、父さんの会社の部長さんでね。仕事の相談に乗ってもらっていたら……つまり……その……なんだ」

仁科にしな先生は、母さんが通うフィットネスクラブのインストラクターさんでね……個別指導を受けていたら……うふふふ」


「ええええ! どういうこと!!」


「この家は、二世帯住宅でね、仁科にしな部長のご両親が昨年亡くなられて、随分とスペースが空いてるそうなんだ」

「だったら、家賃がもったいないから家に越してこない? って言われてね……」


 うん……色々とおっつかない。まったくおっつかない。


 そして頭がおっつかないまま、俺は(元)仁科にしな夫妻に熱烈の歓迎を受けた。ダイニングテーブルには、とんでもなく豪華な料理が、ところせましと並んでいる。

 ローストビーフに、北京ダック、三元豚のロースカツ。和洋中なんでもござれだ。

 イベリコ豚の生ハムに、くしに刺さったドネルケバブ、サンチュとセットの焼肉まである。イタリアとトルコに韓国料理、なんでもござれだ。食レポが得意なテレビタレントなら、


「お肉のバンコク博覧会や!」


なんて言い出しかねない。


「さあさあ、若いんだから、どんどん食べてくれたまえ」


 お母さんの再婚相手の仁科にしなさんが、白い歯を光らせながら熱い胸板をピクピクと動かしている。


「鳥のささみと卵の白身しか食べない人間がよく言うわ」


 お父さんの再婚相手の仁科にしなさんが、銀の細フレームメガネをすちゃっと構えて厳しく言い放った。


「なんだとぅ」

「なによ!」

「まあまあまあまあ!」

「たのしくいきましょう!」


 険悪なムードの元夫妻を、俺の父さんと母さんがやんわりと仲裁をする。

 うん……これは、離婚してよかったのかもしれない。そして、人当たりの良い俺の父さんと母さんと再婚したのは、とてもよかったのかもしれない。


 そして俺は考えた。


 マッチョでさわやかなお父さんか、メガネでキャリアウーマンのお母さん。

 どっちがいいんだろう……わからん。


 ・

 ・

 ・


 とにかく俺は、わからん殺しの連続攻撃でHPが1桁になってしまった。

 今日はもう寝よう。そうしよう。悪いけど一番風呂をいただこう。

 俺は、フラフラと脱衣所で服を脱ぎ、ばちゃばちゃとかけ湯をして、ゴシゴシと頭と身体を洗って、ちゃぷちゃぷと湯船につかった。HPがゆっくりと回復していくのがわかる。

 そんなのんびりとした、完全なプライベートな空間で、いきなりイベントが発生した。


 ガラリ。


 めっちゃ美人で、めっちゃスタイルのいい金髪ショートのおねーさんが、いきなりお風呂に入ってきた。

 そして、ばちゃばちゃとかけ湯をして、仁王立ちになっていきなり俺にむかっていった。


「ちょっと、詰めてくれない? お風呂に入れないでしょう!」


 俺は言われるがまま、体を縮こませると、おねーさんは湯船をまたいでザブンとお風呂に入った。わざわざご丁寧に俺の方を向いて、おっぱいも、ここに書いてはよろしくないところまで、色々と丸見えにしながら湯船をまたいで、ザブンとおふろに入った。


 おねーさんは、湯船に肩までつかると、しみじみと言った。


「うーん、生き返る! やっぱりお風呂って最高ね!」

「は、はあ……」


 俺が、全身をカチンコチンにしながら、とくにここには書いてはよろしくないところを、ことさらにカチンコチンにしてオトオドと返事をすると、おねーさんは、かなりいまさらなことを言った。


「ところで……あなた、だあれ?」

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