バイト全員にバックれられたので女神と共に異世界でコンビニを経営したいと思います

猫と犬が好き

第1話

 朝、俺こと東雲雷牙しののめらいがはいつものように業者が来る時間に合わせてコンビニに行くと何故か店には電気がついておらず、入り口には『すみません、やめます』と一言だけ書かれた張り紙が貼られていた。


 ……これが最近何かと話題のバックれってやつですかぁ。ウチの店舗はシフトも融通を利かせていたし、意見も聞いていたからやる人はいないと思ったんだが……まさかやるとは。


 しかも、1人や2人ならまだしもバイト全員。なんというか、呆れや怒りを通り越して笑えてくる。


「すみませーん!納品に来たのですがー!誰かいますかー?」

「あっ!すみません、今行きますねー!」


 ※


 朝の繁忙時間が過ぎた頃、事の経緯を本部に報告した結果、当面の間は24時間営業をやらなくてもいいと言われた。


 なんというか、担当の人に電話の向こうで同情されてた気がする。


「あ、あの、このコンビニの店員は貴方しかいないようですが大丈夫ですか?応援を呼んだほうがいいんじゃ?」

「ご心配ありがとうございます。ウチほどではないですけど、他店舗でもバックれという迷惑行為が起こっているらしく呼べる状況じゃないんですよね。まあ、キツイですけどなんとかなってます。これでも店長なので」


 目の前の清楚系な見た目の女性がなるほど、と頷き、考えるそぶりを見せること数分後。


「なら、女神である私と異世界でコンビニを経営しませんか?私となら上手くいきますよ!」

「なに言ってるのかわからないです」

「あの、女神と言いましたがそこはなんら重要じゃありません。スルーしてもらっても構いません」


 ……清楚系な見た目で厨二病かぁ。これにも付き合わなきゃいけないの?厨二病なのに設定を軽視していいの?てか、異世界では美味しい食べ物がー、とか長々と説明してるけどこれは軽い営業妨害だよ?貴方の親に電話行くよ?マジで。


 たしか迷惑客対応マニュアルでは——。


「——というわけで、異世界で私とコンビニ経営をしませんか?何度も言いますが、あくまでコンビニの美味しいスイーツとお弁当を異世界に広めるためですから!決して私が食べたいとかじゃないですからね!?」

「いいですねー!」


 冷たい反応ではなく、あえて乗っかる。そうする事で相手の欲求は満たされて怒らせることなく満足させることができると同時に羞恥を感じさせて立ち去らせることができる。


「話はまとまりましたね!それでは行きましょう!実を言うと私、土地をすでに確保しているんですよ!」

「おー!用意周到ですね!流石女神様!」

「もうっ!経営パートナーなのですから私に様は不要ですよ?」


 自称女神がパチンッと指を鳴らすと足元に幾何学模様や読解不可能な文字が浮かび上がる……ってこれもしかしなくても魔法陣だよな!?


 どこにプロジェクションマッピングの道具を仕込んだんだよ!?こんな本格的な厨二病は初めて見たよ!?マジで!?


 君はきっと初犯だろうし厳重注意で終わりだろうけど、俺が叱られるんだよ!?本部から!


「いい加減に——」

「では、転移しますね!えいっ☆」


 しろよ、と言おうとしたが、真っ白な光が俺の視界を強制的に奪った——。

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