忘れられ師の英雄譚/第三巻 〜未来の書〜:あらすじ

 復活した魔王が倒されて一カ月。

 ロミナの演説により、世界的に忘れられ師ロスト・ネーマーの名が注目されたものの、それは同時に忘れられ師ロスト・ネーマーを偽りし者も現れ、世間的には良くも悪くも注目される事となった。


 そんな中、ロミナ達は旅に出る気持ちを持てぬまま、未だマルージュに滞在していた。

 シャリアに伝書でカズトの事について知った事実や、それを乗り越え進もうと伝えた所、交易でまたここに来ると言っていたシャリアが、アンナと共にロミナ達の前に顔を出した。


 シャリアとアンナの元気そうな姿に安堵するロミナ達。そんな彼女達に、シャリアはカズトを忘れている事実と共に、戦いの場に遺品となるような物が残っていなかったかを尋ねてきた。


 この世界の者は死と共に死体が消えるが遺品が残る。

 しかしそれが残っていなかった事実に戸惑うロミナ達に、シャリアはカズトが死んだ直後、肉体が消える前に誰かがそこから転送したのではという見解を示す。


 彼女達が知る限り、そんな事ができる者は転移の宝神具アーティファクトであるワースのみ。


 カズトが死んでいるなら、せめて遺品を手にしてそのケジメを付けたいというシャリアの言葉に感化され、ロミナ達は彼女達と一緒に魔誕の地下迷宮に足を運ぶ。


 そこでワースと再会した彼女達が、カズトを何処にやったか問いただすも、彼はそれに答えず、死者を追ってどうするのかと問いかける。


 カズトが死んだケジメを付けたいと語るシャリアだが、そんなものは心の問題だと取り合わないワースに、ロミナは聖勇女としてカズトの遺品の下に転移して貰えないかと頼むが、カズトに力を貸し転移の力を失っていると言葉を返す。


 カズトは死んで皆に忘れられる覚悟をしてロミナ達を助けた。その意思を汲まなければ彼も報われないだろうと諭すワースだったが、ミコラが忘れられないシャリア達の辛さ。そして自分達が忘れてしまった悔しさを叫び、他の仲間もまた、辛くても記憶がある事を羨ましく思っていると告げると、ワースは突如、ならばキュリアの故郷であるライミの村で、万霊の巫女に占って貰えばいいと助言する。


 助言に従いライミの村に向かった先で、エスカにカズトの死とその遺品を追っている話を伝え、占術にて在処を占ってもらった一向は、今度はロムダート王国の王都ロデムの城を示された。


 死んでいるはずのカズトに導かれるように旅を続けたロミナは、王都ロデムでマーガレス王と再会。

 そこでは事前に彼がカズトについての情報収取をしていたのだが、ギルドカードのクエスト履歴に動きはなく、また遺品についての手掛かりもなかったのだが。

 近隣の町キャダルで、とある子供の誘拐事件を解決したのが忘れられ師ロスト・ネーマーではないかとの噂されている事実を聞く。


 真実を確かめる為、キャダルの冒険者ギルドで事情を聞くと、それは本当の忘れられ師ロスト・ネーマーであれば確かに事を成せそうな情報があった。

 そして当日武芸者が宿泊した宿がないか調べた所、子供を助けてもらった夫婦が営む宿の宿帳で、カズトの名前を発見する。


 幻獣を連れた武芸者はウィバンに向かうと言っていたと知り、急ぎウィバンに向かった一行。


 事前に伝書でディルデンにカズトが来ていないか調べてもらったが、それらしい情報がないと知り落胆するロミナ達。

 そんな中、ロミナは突然見た白昼夢に導かれるように、その場を駆け出していた。


 彼女が向かった先はシャリアの墓碑。

 そこに、幻獣アシェを連れたカズトが立っていた。


 アンナに皆の記憶を取り戻させて欲しいと頼まれたかずとは、パーティーに戻れば記憶は戻るが、辛い想い出も思い出す。その覚悟はあるかと問いかけると、皆が首を縦に振った。


 ロミナに頼み、聖勇女パーティーに戻ったカズト。

 それにより記憶を取り戻した仲間達は喜びを分かち合うが、ロミナだけは何時もカズトを苦しめ、死なせてしまった強い後悔にさいなまれ、その輪に加わる事ができなかった。


 後悔と自責の念ばかりを口にし、カズトの下にいる資格なんてないと言いかけたロミナだが、彼は笑顔で、約束を果たしてくれてありがとうと口にする。


 彼が仲間と思って欲しいと約束を交わしたあの日から、ずっと自分達を仲間と想い続けてくれた優しさ。そしてそこにある想いに気づいたロミナは、やっと素直に彼の胸に飛び込んだのだった。


 その後、カズトがアーシェとワースの力で生を取り戻した事を知ったロミナ達。

 これでパーティーにも戻って一件落着かと思いきや、フィリーネ、ルッテ、ミコラの三人が、仲間であるとまたカズトを傷つけてしまうのではと不安を見せる。


 カズトは聖勇女パーティーを解散させたくないし、誰かを苦しめたくもないと、皆で話し合ってパーティーに自分を残すか決めて欲しいと委ねると、その決断の為に皆一人一人に一日ずつ二人きりの時間を作って欲しいと提案される。


 時にドギマギし、時に本音を語り合いながら、彼女達と言葉を交わしたカズト。

 そしてロミナ達が下した決断は、彼と共に旅を続ける事だっら。


 共に歩みたいと決意したアンナも加えた聖勇女一行は、カズトの秘めたる夢と共に、パーティーとして改めて旅を始めるのだった。

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