忘れられ師の英雄譚/第一巻:あらすじ

 絆の女神アーシェが失った力を取り戻したいという願いを聞き入れ、異世界フェルナードにやってきた主人公のカズト。

 彼は聖勇女であるロミナ達一行と共に魔王討伐の旅をしていたが、実力不足の彼を心配したロミナ達は、魔王との戦いで自分達の心の支えとなって貰う事を理由に、彼を追放した。


 しかし、実は世間で噂となっていた忘れられ師ロスト・ネーマーとしての呪いを持つカズトをパーティーから追放したことで、彼女達も、彼女と旅を続けている間に知り合った者達も、彼の事を忘れてしまっていた。


 聖勇女パーティーが魔王を倒して半年後。

 一人旅を続けていたカズトはある日、冒険者ギルドで忘れられ師ロスト・ネーマーを集う不可思議なクエストを発見する。


 そのクエストの依頼主は聖勇女パーティーの古龍術師ルッテ。

 あまりに可笑しいクエストに、カズトもクエストに参加すると、彼を忘れていた彼女は本当に忘れられ師ロスト・ネーマーを見定めるべく、集まった者達に力を奮った。


 皆が逃げ帰る中、ひとりその場に残ったカズトは、力ある仲間を欲し悲壮感をあらわにする彼女を放っておけず、その場で聖勇女パーティーの素晴らしさと希望を語り、ルッテに呪いと引き換えに得ている『絆の力』で手にした力を隠しつつも、戦いの中彼女に実力を示して見せた。


 ルッテの願いを聞き届け、クエストの内容を知るため、ロムダート王国の王都ロデムにやってきた二人。

 そこでカズトは、自身のことを忘れている聖勇女パーティーであるロミナ、ミコラ、キュリア、フィリーネ。そして王国の王であるマーガレスに謁見を果たす。


 そこでカズトが知ったのは、ロミナが魔王を倒した際に受けた呪いで命を失いかけている現実。

 ルッテが力ある仲間を欲したのは、彼女の師匠であり四霊神である最古龍ディアに挑み、彼女が守っている魔王の呪いを解ける宝神具アーティファクトを手に入れ、ロミナを救うため。


 だが、魔王との戦いににて傷つき恐怖した聖勇女パーティー。

 しかも、ロミナだけでなく彼女の呪いの進行を止める為戦いに加われないキュリアに、国王故に口を離れられないマーガレス。その三人を欠いた中で、魔王に匹敵するほどの力を持つディアを相手にするのは不可能と彼女達は考えていたのだ。


 そんな彼女達の苦しみを知ったカズトは、ひとりロミナを助けるために最古龍ディアに挑むことを決意する。

 ルッテとマーガレスにのみにその事を話し、マーガレスの協力を取り付け旅支度を始めるカズト。


 彼もまたディアを相手にする事に不安を覚えていたのだが、そんな中、呪いに苦しむロミナが一人、カズトの前に現れる。

 そこで彼女が、誰かわからない仲間と共に旅をし、励ましてもらっていた記憶を覚えていた事を知ったカズトは、死にたくないと涙する彼女に、励ましの言葉を掛けてやった。


 王宮に連れ帰る途中に意識を失ったロミナを皆の元に帰したカズトは、異端である力を隠そうともせず、本来武芸者では使えない術を使い、彼女の呪いを解こうとする。

 残念ながらその夢は叶うことはなかったものの、彼はその現実を受け入れつつ、それでも最古龍ディアを倒すため、改めて強い決意を固めた。


 カズトの旅立ちの朝。

 突然宿に現れたルッテは、突然カズトに付いていくと言い出す。

 流石にミコラやフィリーネと一緒に行けとその言葉を拒否した彼だったが、なんとその場にミコラやフィリーネまで現れた。


 最初は彼女達二人の姿勢に苛立ち、断りを入れたカズトだったが、二人が隠していた本音を話し、三人がカズトを信じて共に旅立ちたいとも改めて願い出た事で、彼は四人での旅をすることを決めた。


 最古龍ディアのいるフォズ遺跡を目指す中で、カズトはルッテからディアの話を聞きその強さに驚愕するものの。戦いを諦めない彼はそれでも様々な情報を引き出し、少しでも勝てる策を考えていく。

 だが、それでも未知数の最古龍ディア。そして遺跡を守るダークドラゴンまでいると聞き、少なからずカズトの心にも不安が強くなる。


 そんな中で、フィリーネやミコラの不安な心内を聞いたカズトは、同時に昔と変わらぬ仲間達を感じつつ、彼女達を守り、ロミナを助ける気持ちをより強くした。


 フォズ遺跡に到着した一行は、本来敵が多いはずのこの場所で、戦いもなく遺跡の奥の奥にあるダンジョンい入れた事を不審に思いつつも、そのまま奥に進み、ダークドラゴンのディネルと出会う。


 そこでルッテが最古龍ディアの娘だと知り驚くカズト達。

 だが、それでもロミナのために前に進むと決意するルッテに対し、ディネルが人の姿のままその牙を向いた。


 前衛として前に出るミコラとカズトは、カズトの策通りにフィリーネと共にミコラを強化し、相手の龍武術を退け一旦はディネルを退けるも?怒ったディネルがついにダークドラゴンとしての本性を現した。


 予定通りミコラに代わりルッテが前に出たのだが、彼女はカズトに、ディネルを殺さないように懇願する。

 彼女の優しさを受け、ついに始まったダークドラゴン戦は、呪いの力を持つ闇の壁を展開し、じわじわとカズト達を追い詰めようとする。

 そんな中、カズトは自らその闇に飛び込むと、死んだと見せかけて古龍術でダークドラゴンを呼び出し、更に武芸者の術を駆使し、見事にダークドラゴンを撃破した。


 しかし、そこで駆使した古龍術は亜神族のみが使える術。

 それが原因で、カズトは三人に忘れられ師ロスト・ネーマーだと気づかれてしまう。


 三人はロミナから、以前の旅で共にいた知らぬ誰かが忘れられ師ロスト・ネーマーではないかと聞いていたため、当時自分達に力を貸していたのがカズトであることを知る。


 彼女達の記憶が戻ればわだかまりが生まれ戦いに支障が出る。

 そう憂い、どうすればよいか分からぬまま、カズト達は最終決戦の場の前に立ったのだが、そこで三人が提案してきたのは、自分達をパーティーに加える事だった。


 忘れられ師ロスト・ネーマーの力があれば、ロミナを助けられるかもしれない。

 そして何よりカズトのことを思い出すのは面白そうだと笑う彼女達に感化され、カズトは彼女達をパーティーに加える。

 そこで三人はカズトの事を思いだし、彼への信頼を改めて口にし、共に戦う決意を固めてくれた。


 ディアのいる部屋に入ったカズト達は、彼女の予想以上の実力に戸惑う。

 そんな中で三人が危機を迎え、カズトは咄嗟に、呪いと共に手にしたもうひとつの力、パーティーメンバーを強化できる『絆の加護』を発動しようとするが、そこで今起きている出来事が現実でないと気づき、その幻影を打破してみせた。


 見せられた幻影こそ、宝神具アーティファクトを扱えない者達が取り込まれてしまうもの。

 それを打ち破ったカズトに、本物のディアは、彼が娘の希望だと口にするも、同時に宝神具アーティファクトは聖勇女か魔王した扱えない代物だと聞かされる。


 動けないロミナ。既に死んでいる魔王。

 どうにもならない現実に悲観するルッテ達だが、カズトはディアの言葉の裏にある可能性を理解し、ただひとり宝神具アーティファクトの試練に挑むことにした。


 宝神具アーティファクトに触れた途端。

 解放の宝神具アーティファクト、ギアノスの力で天地の狭間と呼ばれる場所に導かれたカズトは、ギアノスより試練を与えられる。


 戦い、選択せよ。

 その言葉と共に現れたのは、聖勇女ロミナ。


 彼女はカズトが自分達に何も言わず追放を受け入れた事への不満や、彼と別れてしまった哀しみを口にし襲いかかってきた。


 現実にありえない、しかし現実にしか感じないロミナとその言葉に動きが鈍ったカズトは彼女に斬られ、命を失うはずだった。

 しかし、殺された彼は生きていた。


 何度死んでも死ぬ前に戻る。

 そんな輪廻を繰り返し、カズトは痛みと苦しみから心が追い詰められていく。


 絶望ばかり感じ始めたカズトが、絆の女神アーシェとの想い出と共に、また何時かパーティーを組みたいと願ったその時。その願いを叶えパーティーに加わり、記憶を取り戻したアーシェが彼に聖剣を授け、彼女と戦い願いを叶えろと励ます。


 聖剣を手にしロミナと対峙したカズトは、自分と共に死んでと叫ぶロミナに、お前は生きろと願い、彼の持つ哀しき心だけを断ち切る一刀を叩き込み、ロミナを哀しみから救い、宝神具アーティファクトの試練を乗り越えた。


 王都ロデムに戻り、解放の宝神具アーティファクトの力で意識のないロミナの呪いを解いたカズトは、皆が揃っている前でルッテ達にパーティー解散を告げてその場を去り、彼女達の記憶から自身を消し去った。


 魔王との戦いのように、旅をすればまた苦しむ時が来る。

 そんな想いはする必要がないし、もうそれぞれ幸せな生活を送れるはずと、カズトは、再び彼女達に忘れられる選択を選んだのだ。

 そして、彼は再び一人旅に戻っていった。

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