文化の足かせ
シヨゥ
第1話
技術進歩で世界は変わっていくというのに、根差した文化は変わることを良しとしない。こうあるべき。こうするべき。そんな明文化されていない暗黙のルールがのしかかる。
「うちっていつリモートワークになるんですかね?」
そんな質問を上司に投げかける。
「当分無理だろうな」
「どうしてです?」
「社長が社長だからな。パソコンの導入に至るまでもすったもんだあったんだ。そこからさらにってなると……次長が社長になるまで待たないといけないんじゃないか」
「10年以上先になるんじゃ」
「かもな」
「時代はもう出社して仕事するのなんて古いっていうのに」
ため息がシンクロする。
「今の社会は個々人がそれぞれのスキルをフル活用して仕事をするスピード型だが、うちは一致団結スクラム組んでのパワー型。そりゃあケツ叩いて売り上げ伸ばせと言っても無理な話だよな」
「やっぱり上から詰められるんです?」
「この後な」
「お疲れ様です」
「本当憂鬱。どれだけ手厚くフォローしても動きが鈍けりゃ意味がない。それが社長にはわからないんだよな。まあ制限の中で如何にうまく立ち回るかが仕事ではあるんだが」
「もっと最新技術を活用しようと提案してきてくださいよ」
「その導入費用をプラスで稼いでから言え、って言われるのがオチだな。まぁ言うだけ言ってみるさ」
上司が立ち上がり屋上を去っていく。
「お前もさぼってないで仕事しろよ。とりあえず足で稼いで来い」
「それが古いんですよ」
そう言ったところで足で稼ぐしかないのが現状だ。
「午後も頑張りますか」
そう言い聞かせぼくも上司の後を追った。
文化の足かせ シヨゥ @Shiyoxu
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