現代ドラマ『Leo』〜絵画の少女に恋した少年は、恋人と運命の人との狭間で揺れ動く〜
空花凪紗~永劫涅槃=虚空の先へ~
第1話
僕は学校の屋上で寝転がって天を仰いでいた。今はグローバル探求の時間で【天気予報士になろう】という名の授業を選択していた。その授業の一環で観天望気をすることになったのだが、僕は友達と一緒に遊んでいた。
「気持ちいいね。サイコー!」
「だな。お?パンツ見えそう」
岡田が少し離れたところにいる女子の風でめくれそうになっているスカートに注視していた。それを見て僕は呆れ顔を作る。
「やめとけ。睨まれてるぞ」
「本当だ。やべ、こっち来る!」
岡田にパンチラを見られそうになった女子、須藤がスカートを両手で押さえながら地面に寝そべる二人の元までやって来る。僕は慌てて立ち上がった。
「ねぇ。岡田。見えた?」
須藤が眉間に皺を寄せながら岡田に訊く。それに対して岡田は正座の体制を取り、首を振って応えた。
「いえ。見てません」
「見えたかって聞いてるんだけど?」
「あと少しで見れたっていうか……」
「見ようとしてたんだ。サイテー。先生に言ってこよ」
そう言い残して須藤は二人の元から離れて担当の秋山先生の元へと向かった。僕は慌てて呼び止める。
「ちょっと待って。僕は関係ないよ」
僕の言葉を聞いて須藤は振り返る。
「あなただって寝てたでしょ?同罪よ。
愛とは僕が今付き合っている同じ学年の女の子の名前だった。岡田は正座の体制のまま僕にジト目を向けてきた。
「いいよな。彼女いて」
「まぁね」
「それにしても未だに信じられないよ。お前と愛ちゃんが付き合ってるなんて」
「そうなのか?」
岡田は「ああ」と頷くと正座をやめて胡座をかいた。
「お前は確かに顔は整ってるけどカッコイイ系というよりもむしろかわいい系だからな。俺の方が絶対イケてるのに何で断られたんだ!」
「そりゃ、入学一週間目で告ったからでしょ」
岡田は顔こそそこまで良くないが背は高いしスタイルも良い。その性格から女子に毛嫌いされているが、男ウケは良かったりする。そんな岡田は入学式の時に鮎川愛に一目惚れして、運命を感じ、一週間のイメトレを経て告白したのだ。結果は惨敗。この一幕は蒼嵐高校73期の伝説になっている。
「まぁ運命の人はもうすぐ分かるんだけどな。俺にももうすぐで彼女が出来たりして?」
「そうだといいな」
「早く明日が来ないかなー。待ち遠しいぜ」
明日、高校二年の秋。11月22日の良い夫婦の日に運命の人が知らされる。この日は別名『運命の日』と呼ばれていた。数年前に魂の研究が進んで、人は生まれながらにして運命の人がいるということが分かった。運命の人と出会い添い遂げることが望ましい。そんな風潮が今の世の中の流れだった。
「お前、もし愛ちゃんが運命の人じゃなかったら別れるのか?」
「うーん。分かんない」
「俺だったら絶対別れないぞ」
僕と愛が付き合ったのは僕からのアプローチだった。彼女は茶色がかった黒髪のボブヘアーがよく似合うとても整った顔をしていた。僕は彼女の容姿がとても好きだった。ただその好きは歪な形をしていることを僕自身自覚していた。僕は彼女に恋をしてはいなかった。彼女ではなく、ある絵画に描かれた少女に恋をしている。『ヘレーネ・クリムトの肖像』と題されたグスタフ・クリムトの絵。そこに描かれたヘレーネと言う少女に僕は運命を感じている。愛に告白したのは彼女がその少女に似ていたからだった。
「とりあえず明日は学校休みだし一緒に運命の人聞きに行こうぜ」
「うん。いいよ」
僕は天に伸びた飛行機雲を眺めながら思う。彼女に会いたいと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます