第3話 男子高校生は元気でした
今日は週の真ん中の水曜日、1週間の折り返し地点になった訳だが月火と2日間涼君に会えた俺はわりかしいつもより元気な気がする。
やっぱり美しいものを見るのは心と身体に良い影響を与えるらしい。
「(いやぁ、いくら二駅っていってもやっぱこの人混みはしんどいよなぁ)」
今日もいつも通り早めに家を出て電車に乗ったが、通勤通学の満員電車の辛さは良くわかる。そりゃ俺より前の駅から乗ってきてる涼君がしんどいに決まってる。
そして会社の最寄り駅に到着し、ルーティンをこなすべくコーヒーを購入して公園のベンチに向かうと見慣れない自転車が止まっていた。すると後ろから俺の首元に冷たいなにかがピタッとくつけられた
「うわあああああ!!!!!」
「あははは、健人さんびっくりしすぎでしょ」
後ろから現れたのは涼君だった。昨日一昨日とは違ってだいぶ顔色が良い。俺の首元に当てられてたのはペットボトルの水だったらしい。
「え、涼くん?あれ、この自転車って」
「うん、昨日直してきたんだ。だから今日は電車使ってないから元気」
「そっか、良かったよ。もしかして俺が来るのここで待ってた?」
木の影に隠れてみたいだったからちょっと期待も込めて聞いてみた。すると唇の前に指を立てて小悪魔な笑顔で
「秘密」
とニコっとはにかんで笑う彼に俺は今日も心臓をやられた。制服のカーディガンで手元が萌え袖になってるのも更にあざとい。
冷静になるために俺はベンチに座って缶コーヒーを開けて飲み始めた。
「健人さん、今日残業とかある?お仕事何時まで?」
「え?残業は特にないと思うし18時には会社出られると思うけど…なんで?」
「昨日一昨日と助けてもらったお礼に健人さんにご飯ご馳走したいなと思って」
「いや、流石に高校生の子にご飯奢らせるとかさせないよ!てかそんなお礼されるような事俺してないし、マジで気にしなくていいよ」
俺が断ると涼君は顔をぷくーっと膨らませて拗ねるような顔をした。うっ、可愛い。
「でもお礼したいし、なんか俺にできることで健人さんがして欲しいこととかない…?」
そんなきゅるんきゅるんの困り顔で俺を見ないで欲しい。して欲しいことなんて言われたらそりゃ山ほどあるだろうけど俺は自分の煩悩を全てぶっ殺して健全なことを考えた。
「あー、じゃあ映画。土曜日に俺と一緒に俺が見たい映画に付き合ってよ」
「え?そんなことでいいの?」
「おう、見に行く人もいなかったし1人で見に行くのも寂しかったから涼君が付き合ってくれると嬉しいんだけどなぁ…なんて」
涼君の顔を見るとパァって音が聞こえてきそうなくらい嬉しそうな笑顔をしていた。
「健人さんとデートだね」
「ぶふっ」
デートだなんて数年ぶりに聞いた言葉に俺は飲んでたコーヒーを吹いた。
「ゲホッ、げほ、デートって言い方やめろ」
「えーだってデートじゃん」
最近の若者は映画を見に行くだけですぐにそういう事を言うのだろうか。もう一度俺はデートじゃないからなと言い返した。
「そうだ、待ち合わせ場所とか時間決めたいし連絡先交換しようよ」
「お、おう」
あんだけ躊躇ってたのにあっさりと連絡先を交換してしまった。けど嬉しい。
「じゃあ俺もう学校行かなきゃ。また連絡するね、おじさん」
自転車に乗った涼君の後ろ姿を見送って、再度俺はベンチに座った。俺はそんなにおじさんぽいのだろうか…
今日は週末の楽しみが増えた素敵な水曜日だ
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