浴衣

〈ヒョウ視点〉








「可愛いね?」と知っている声が聞こえ

足を止めて顔を向けると想像した人物の後ろ姿が見えた





( ・・・・浴衣…フェア? )





モールの中心部であるその場所では

女の子達が沢山集まっていて何かのセールでも

しているのかと思い垂れ幕に目を向けると

7月に入った今日の皆んなのお目当ては浴衣らしい





ヒョウ「花火大会も今週からだったね」





今週から毎週と言っていいほどに週末は

浴衣を着る機会のある花火大会が続いていて

俺たちも毎年色んな花火大会に行き…

まぁ…楽しんでいた…





しばらく後ろから見ていると

今日はどうやら二人だけのようだったから

近づいて行き声をかけた






ヒョウ「ソレ、笑実ちゃんには似合わないと思うよ?」






「ヒョっ…ヒョウ先輩!?」






ヒョウ「沙優ちゃんのは…似合うけど

  シュウの好みとはちょっと違うかな」





サユ「えっ…」






笑実ちゃんと沙優ちゃんは春過ぎの

合コンに来ていた一年生で

見た目も中身もまだまだ高校生ぽさの残る素朴な二人だ…





( 失礼な話、異性っていう感じはしない… )





元々の合コンを予定していた女の子の人数が減り

シュウが慌てて手配して現れた1年生達だった




もう会う機会もないかなと思っていたけど

この二人は予想もしない角度からいつも現れる…




俺たちの後輩から追いかけられてだったり

いかがわしいお店から出てきたり…






ヒョウ「・・・ちょっと違うんだよね…」





俺の言葉に「え?変ですか」と手にしている

浴衣を見て眉を下げているこの二人は

よく合コンに現れる子達とは少し違っていて

なんて言うか…





( ペット??良く言って…妹?? )





コウ達も皆んなそんな感じで見ていると思うし…

用事も終わって時間もあるから

ペット達の相手をしてやろうと思った






ヒョウ「俺お腹空いたかも…」





「えっ?お腹??」





ヒョウ「浴衣選び付き合ってあげるから

  そこのカフェで甘い物を御馳走してよ?笑」





サユ「私たちがですか??」






二人はカオルとシュウに尻尾を振ってる子犬達で

きっとご主人様達に可愛いと撫でられたくて

浴衣を選んでいるんだろう




俺にはなんのメリットもないから

せめてケーキ位は御馳走してもらわなきゃね…笑







ヒョウ「この前見た映画の魔法使いみたいに選んであげるよ

  なんだっけ…ビビデ…デブみたいなのだよ?

  女の子達と話しながら見てたからな…」




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