ワガママ

〈エミ視点〉







カオル「俺に何か怒ってる事ある?」





先輩の手が頬に伸びてきて

逸らした顔を正面へと戻されると

カオル先輩は背を少しかがめて聞いてきた





( ・・・・怒るなんて… )





怒れる立場にいない事も分かっているし

カオル先輩が何をしようと先輩の自由だ…




私は首を横に振りながら「ないです…」と言うと

「じゃあ言いたい事は?」とまた問いかけてくる先輩に

怒ってるのかなと思い視線を外した






カオル「笑実ちゃん、俺を避けてるでしょ?」






「えっ?」と逸らした視線をもう一度

先輩に向けると「土曜日…」と言われ

バス停で会った事をヒョウ先輩達から聞いたんだと思い

「課題が…あったから…」と答えると

カオル先輩はクスッと笑いながら「へぇ…笑」と呟いた






カオル「酷い教授だね?笑」





「えっ??」





カオル「笑実ちゃんにだけ課題だすような

  そんな意地悪な教授がいるの?笑」





「・・・・・・」






「ん?笑」と笑いながら問いかけてくる先輩の顔を見て

沙優ちゃん達からか…私と同じ学科の子と遊んだのか…

誰かから、そんな課題は出ていないと

聞いて知っているんだと思った…





「・・・予習とか…復習とか…」





カオル「課題が予習復習だったの?笑

  あと、体調が悪いって聞いたけど?」






「熱測ってみようか?」とポケットから

体温計を取り出したから驚いて「頭が痛いだけです」と

少し離れてから言うと






カオル「頭痛いのにお風呂入ってたの?笑」





「・・・・・・」






全部嘘だとバレているんだと分かり

何も言えずに俯いていると

「避けられると寂しいんだけどな?」と

しゃがんで顔を覗きこむ先輩の表情は

ほんの少し困っているように見えた


 



「避けてるとかじゃなくて…」





カオル「嘘は吐くし隠し事はするし…悪い子だね?笑」





「・・・隠し事?」






なんの話だろうと思ってカオル先輩の顔を見ると

「バイトには慣れた?」と言われ

どうして知ってるんだろうと驚いていると

「里奈ちゃん達は素直だからね」と言う先輩に

少しだけムッとしてまた黙った





( ・・・・嫌な子だ…あたし… )





ヤキモチを妬くなんて間違ってるのに

里奈ちゃん達と楽しく話すカオル先輩を想像したら

モヤモヤと嫌な感情が渦まいて

ダメだと思っているヤキモチを妬いてしまってる…






カオル「体調じゃなくて機嫌が悪そうだね?」





「・・・・・・」





カオル先輩は私があの日

先輩達の合コンを見ていた事に気づいたんだろう…





カオル「何か一つワガママきいてあげるよ」





「・・・・ワガママ…」





カオル「機嫌直してほしいからね?笑」






カオル先輩は床に腰を降ろして

「何でもいいよ?」と笑いながら言うと

顔をかかげてコッチを見上げている





( ・・・・なんでも? )





先輩の言葉に今日シャワーを浴びながら

思った事を思い出して

「本当に何でもいいんですか?」と小さな声で問いかけた…






カオル「空を飛びたいみたいに

  不可能な事じゃなければ何でもいいよ?笑」





「・・・・質問に…なんでも答えてくれますか?」





カオル「質問?いいよ」






私は見上げられているのが恥ずかしくなり

カオル先輩の様に床に座り

膝をギュッと抱きしめながら「あの…」と質問した…





「先輩は…ご飯とパンならどっちが好きですか?」





カオル「・・・・・・」





先輩は数秒固まった後に「ん?」と言いながら

「何の質問?」と笑い出したから

真剣に聞いている自分が恥ずかしくなってきて

「ちゃんと答えてください!」と怒った






カオル「本当にコレが聞きたいの?笑」





「他にも…ありますけど…

  何でも答えてくれるんですよね?」





カオル「何でもって沢山あるやつね!

   いいよ、他の質問は何?笑」





「好きな音楽とか…得意な科目とか…」






足の指に塗ったペディキュアを触りながら

「好きな色とか…」と呟くと

カオル先輩は声をあげて笑い出し

上体はほとんど床につきそうな位に傾いている





「もう…いいです」と言ってお尻を少しずらし

先輩に背中を向けると「ごめんね?笑」といいながらも

まだ笑い続けていた


 




カオル「笑実ちゃん、コッチにおいで?笑」





「・・・・機嫌良くないから嫌です…」





カオル「じゃー質問に答えて機嫌直してもらわなきゃね?笑

  ご飯とパンなら…ご飯かな?

  パンも好きだけど夕食ならご飯だね」






先輩はそのまま好きな音楽なども答えてくれたから

顔を少し先輩に向けると「おいで」ともう一度呼ばれ

何も言わないまま先輩に近づくと

先輩は胡座をかいていた足を真っ直ぐと伸ばし

自分の太ももの上を叩いたから

カラオケ屋の時の様に座る様に言っているのが分かった





自分から座るのは少し恥ずかしいから

膝の部分に座ると「地味に痛いね」と言われ

私の腰に手を伸ばすとグッと抱き寄せて

先輩の顔が目の前にきた…







カオル「でっ…他は何が知りたいの、探偵さん?笑」






「・・・・先輩のヘアワックス…いい匂いがします…」






カオル「俺も一つ答える度に一つワガママきいてもらうよ?笑」







先輩のワガママが何か、何となく分かり

近づいてくる顔に目を閉じて先輩のワガママを受け入れた…



 

カオル先輩は触れるだけのキスをして唇を話すと

「キスは質問の内容によって変わるよ」と言い

「一人っ子ですか?」と質問をすると…






カオル「プライベートな内容の質問は…

  キスも深くもらわなきゃ話せないよ…」






と言って身体をギュッと抱きしめられながら

熱くて長いキスをされた…






ちょっとだけ…

ほんのちょっとだけ

岸野 馨先輩を知った日になった…



 


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