避ける…

〈エミ視点〉






明日は祝日で人の通りも多く

バイト先のパスタ屋も中々忙しくて

3時間のバイトが終わる時には足が痛くなっていた…






ロッカールームで着替えながらスマホを見ると

沙優ちゃんからLINEが届いていたけど…

私の肩は下がりまたタメ息を吐いていた





シュウ先輩に誘われて里奈ちゃん達と3人で

シュウ先輩の部屋で集まってるから

バイトが終わったらおいでと届いていた…





「・・・・また…合コン…」





きっとまた別の女の子達もいて

数日前の様にトイレか寝室に行ってるのかなと思ったら

「行く!」と返事はできなくて…





仕方がない事だし

最初から分かっていた事だけど

目の当たりにしたら思っていたよりも

自分の中で上手く処理しきれていなかった…





「・・・・ごめんね…」





沙優ちゃんにはバイトの途中から体調が悪くなり

今日は真っ直ぐ帰って寝るねと送り

来週辺りには傷も薄まって

またカオル先輩に会えるといいなと思いながら

トボトボと駅まで歩いて行った…





部屋に入るとうっすらと汗をかいていて

先に汗を流してスッキリしようと

シャワーを浴びに浴室へと入り

自分の胸が張っている事に気づき

生理前かなと考えながら

豆乳ジュースを「ハイ!」と笑って

差し出すカオル先輩の顔が浮かんできた…






( ・・・・私…カオル先輩の事なにも知らないかも… )






何であんなに合コンばかりするのかもだけど…

タイプだったり趣味や好きな音楽だったりも

何にも知らないなと思った…





私が知ってるカオル先輩は

優しくて、あざとくて…怒ると怖くて…

キスがとっても上手で…






「・・・・それだけだ…」






たったそれだけしか知らない私が

ヤキモチを妬いたり凹むのは

おかしいのかもしれないなと思いながら

浴室から出てエアコンで少し涼しくなった部屋に入ると





部屋のインターフォンが鳴り出し

「えっ?」と驚きながら時計を見て

宅配業者が来る時間でもなく

恐る恐る通話にすると「笑実ちゃん!」

と沙優ちゃんの泣いている様な声聞こえ

慌ててロックを解除した





濡れた髪のまま下に降りて行くと

途中の階段で沙優ちゃんを支えている

シュウ先輩と……カオル先輩がいた…





先輩達がいる事にも驚いたけど

顔を俯かせてる沙優ちゃんが気になり

「どうしたの?」と顔を覗きこむとお酒の匂いがした…






シュウ「ちょっと飲み過ぎたみたいなんだよ」





「・・・・・・」






シュウ先輩に失礼な事を思いつつチラッと目だけ向けると

「俺じゃないから!」と首を横に振っている…




( シュウ先輩以外に誰が… )





何となく週末のことがあり

どの先輩の事も疑ってしまう…






「沙優ちゃん歩ける??」




サユ「うぅーん…」




シュウ「とりあえず部屋まで運ぶよ?」






ドアを開けて「どうぞ」と言うと

先輩達が玄関先にある男性用のサンダルを見て足を止めた






シュウ「・・・・イルノ…」





シュウ先輩が小声で誰か中にいるのかと聞いてきたから

「防犯用にって…お兄ちゃんが…」

と説明をすると「あぁ!」と納得していた






兄「兄ちゃんの中古をやるよ!」





「どうせなら新品ちょうだいよ…」





兄「使用感ある方がリアルなんだよ!笑

  宅配業者とか玄関に来る奴は意外と見るからな」






こんなスリッパ一つで本当に防犯になるのかなと

半分疑っていたけど先輩達の反応を見て

意外と効果あるんだなと思った




沙優ちゃんをベッドに降ろしてもらい

「ありがとうございました」と言うと

シュウ先輩が「笑実ちゃん冷たいお茶ちょうだい」と言って

ラグマットの上に座りだすから「えっ?」と

先輩に目を向けると…






シュウ「俺の部屋からここまで結構距離あったし

  暑くて汗かいたからチョット休ませて」





先輩達の服が汗で少し張り付いているのを見て

冷房を強めてから廊下にあるキッチンへと行き

コップに麦茶を注いでいるとカオル先輩が部屋から出て来て

「一個持っていくよ」と言いコップを一つだけ

手に握ると部屋へと戻って行き

シュウ先輩に渡しているのが見えた





( ・・・・いらないのかな? )





そう思って見ているとカオル先輩はコッチに戻ってきて

もう一つのコップを握りクイッと全部飲み干してしまうと

「おいで」と手を引き脱衣室の中へと入っていった





先輩は私の方をジッと見てくるから

何となく目を逸らした…

階段で一瞬目を合わせてからは

一度もカオル先輩の目を見ない様にしていた…





( 上手く笑えないような気がしていたから… )







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