姉さんはめい探偵

Areimu

序文

 物語の始まりはいつが正解なのだろう。

例えば自叙伝であれば私の生まれた日から始めるのが正解だ。

しかし物心がつくまでは人づての話、その大部分は年表の羅列。

読み手もこれでは面白くなく、すぐに飽きてしまうだろう。

せっかくこうやって筆を手に取るのだ、恥ずかしいけれども読んでもらいたい気持ちが大きい。

 では需要の高い恋の物語ならどうだろう。

あの人と出会いが始まりの恋の物語。

あの日々は私の人生の大部分。

きっと見ごたえのあるラブストーリーになること間違いない。

でも、胸の内をすべてさらけ出すのは恥ずかしいし、この気持ちは独り占めしたい。

私はこの物語の作者だ、多少のわがままは許されて当然。

 さて物語の始まりはどうすればいいのだろうか。

これではいつまで立っても書き始めることができない。

手元にある小説や今まで読んだどの物語も主人公達の冒険は綺麗に始まっている。

スムーズに旅立つ彼らが羨ましい。

彼らと私の違いは何だろう。

答えは考えるまでもなく明確だ、彼らは空想上の人物で私は確かに存在している。

彼らは物語の主人公として最初から存在しているのだ。

彼らのように旅立つには私も主人公にならなければならない。

 そう私の物語の始まりは私が主人公になった日。

あの夏めくが終わった入梅の日。私の物語はここから始まる。



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