恋日可恋の分岐点
仲仁へび(旧:離久)
第1話
!放送禁止!
過激すぎるテレビアニメが、青少年にもたらす影響について考えた結果、今回の放送は見送らせていただきます。
「いや~、やりすぎじゃないですかね。何でもかんでもアニメのせいとか漫画のせいにされると、我々クリエイターはちょっと」
「しかしですね。子供は影響を受けやすいんですよ」
「いやいや、そういうのは周りの環境が」
私の家は、とっても勉強に厳しい家でした。
門限は夕日が落ちるまで。だから学校が終わった後、友達とも遊べません。
私は普通の女の子がするような事を知らないんです。
ルールに縛られない間、学校の教室にいても、皆と話題はあわない。
流行りの物なんて、遊びの事なんて、何一つ知らないから。
誰かと連絡をとりたくでも、家の電話は使えない。
携帯も、持たせてもらえない。
私の世界には、常に勉強があった。
けれど、それはもう過去系。
彼らは、仕事で海外にいった時、事故でいなくなってしまったから。
これで私は解放される。
そう思いました。
自由に生きられると。
でも、自由って?
どんなもの?
私は私を生きる方法が分かりませんでした。
突然、わけも分からない別の世界に放り込まれたみたい。
だから、私は、誰かの生き方を参考にしようと思いました。
「えーっ、かれん、わかんなーい」
「かれんの夢は、およめさん。生活力もあって、経済力もある、先生のお嫁さんになりたいな!」
それは、テレビに出てきたラブコメというジャンルのお話の、その中のヒロイン。
可憐っていう名前の女の子。
可憐には、とても多くの友達がいます。
あんなふうになれたらな。
名前が似ている事もあって、私はすぐに親近感を覚えてしまいました。
この子を真似すれば、幸せになれるはず。
そう思ったら、少しだけ気が楽になりました。
それから私は、可憐として可恋の人生を歩むことにしました。
引き取ってくれた祖母と祖父に迷惑をかけないように、精いっぱい普通の女の子を演じます。
普通の女の子は、友達と喋ったり、恋をしたり、遊びに出掛けていったりする。
そんな当たり前、私は今まで知らなかった。
だから、毎日がすごく新鮮で、刺激に満ち溢れていました。
それが良い事なのか、悪い事なのかまでは、まだ分からなかったけれど。
そんなある日、私は男の子と出会いました。
ブチ柄の猫を肩に載せた、男の子です。
その男の子は、たぶん恰好いい子なんだと思います。
皆が、その男の子に注目していたから。
目をキラキラさせて、一緒になりたがっていました。
でもそんなの多くの女の子に恋されているのに、その男の子はなぜか私にばかりかまってきます。
私は、普通が分からないから、必要以上にかまってほしくないのに。
そんな事を思っていたから。
きっと、他の女の子の勘にさわってしまったのでしょう。
私は虐められるようになってしまいました。
私はただ、普通の女の子として幸せになりたかっただけなのに。
しばらくすると、
「最近元気ないね。何か悩みでもあるの?」
って、男の子が言ってきました。
でも私は「何でもないよ」事情を言いません。
だって、可憐だったら意中の男の子以外には、必要以上にべたべたしない。
私にだってきっと、いつかとっても素敵な恋の相手が見つかるはずだから。
だから、何も言わない事にしました。
「ただいま。あれ? まだおばあちゃんとおじいちゃん帰ってきてないのかな」
「よし、じゃあ今の内に録画したアニメ見ちゃおうかな」
「おかしいな。録画されてないや。放送されなかったのかな。あとでお店で借りられるかな」
恋日可恋の分岐点 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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