第28話 幸福な結末

――はい。

 というわけで、現代編チュートリアルシナリオ『おまえは だれだ?』終了です。

 『肉体への回帰』エンドでした。お疲れ様でした!


A「お疲れ様でしたああああああああああああああああああああああああああ!」


――ということで、今回は無事、生存エンドだったね。おめでとう。


A「いやー。良かった良かった! 二連続で死亡ロストさせたら、さすがにGMにも申し訳ない感じになるところでした」


――バッドエンドも、それはそれで楽しいけどね。

 ちなみに、シナリオ的な疑問点などはある?


A「ほとんどありませんね」


――まあ、さっき全部、解説しちゃったし。


A「ちなみに、最後のゲームに失敗した場合、どうなってたんです?」


――ええと……ざっくりシナリオ的には、以下のようになってます。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「……残念だ」

 “世界”は、哀しげに笑います。

「きみは結局、自分が何者かを正確に理解することができなかった」

「一つ聞きたい。きみは、きみ自身のことを何者だと思っている?」


 ※RPで答えてもらう。


「なるほど。その答えは間違っているようでいて、正しいのかも知れない」

「なにせ我々は、大本を辿れば同じもの。あり得たかも知れない、可能性の一つなのだから」

「だが、これで良かったのかもな」

「あなたはこれから、あなたが望む者になれるのだからね」

「さよならだ」

「どうか、我々を憎まないでくれ。憎むべきは、我々みんなを弄んだあの怪物、――ナイアーラトテップと名乗ったあれなのだ……――」



 ふとあなたが目を覚ますと、いつものベッドで目を覚まします。

 見慣れた天井。見慣れた部屋。

 見慣れた、自分の身体。

 しかしあなたは、自分の身体が思うように動かないことに気づくでしょう。

 あなたの身体は、【PLが答えたタロットカード】が暗示する何者かに、乗っ取られてしまっていました。


※もはや、探索者はプレイヤーの制御下にない。

※GMがその探索者を自由にロールプレイしてよい。

※プレイヤーが選んだタロットカードによるロールプレイ。

 (例)

 “魔術師”なら他人を信じられない性格。

 “審判”なら、失敗した人生をくよくよと悔恨する性格。

 “世界”なら、堕落した性格。


――ちがう! こんなのは自分じゃない!


 心のどこかで、あなたは叫びます。

 しかし、あなたの肉体もはや、あなたのものではない。

 得体の知れない何かに、主導権を握られてしまいました。

 とはいえ、最後まで諦めてはいけません。

 あるいは何かの拍子にまた、人格が入れ替わる瞬間が来るかもしれませんから……。


         ⇒キャラクター・ロスト(NPC化) 『オマケの人格』END


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


――ってかんじ。

 人格に書き換えられてしまうエンディングってことだね。


A「はえぇぇぇぇ。ぜったいいやだぁ、この結末」


――まあ、これもこれで面白い結末だけど。


A「あっ。……ちなみに……そのぉ。生き残ったからには……?」


――はい。まず、黒男の狂気値を0に、体力、精神力を初期ステータス値まで回復してください。


A「ほいほい」


――その後、円筆黒男の成長処理を行いましょう。


A「おお! RPGの醍醐味!」


――クリア報酬は、そのシナリオの難易度によって変わります。

 今回は、およそ三時間ほどで終了する中編シナリオになっていますので、黒男は新たなスキルを、三つだけ覚えることができるでしょう。


A「やったー!」


――ただし、我々現代人にとって、恐るべき怪異との遭遇は精神に深刻なダメージをもたらします。

 全部で、20。

 20以上のスキルを取得してしまったキャラクターはその後、NPC化……つまり、キャラクターとして利用することができなくなってしまうでしょう。


A「えっ。た、たった20?」


――はい。現代編のキャラクターは、基本的に使い捨てなのです。


A「しょぼん」


――とはいえ、NPC化するということは、そのキャラクターがのちのち、他のシナリオに登場するかもしれない、ということです。ある意味ではその瞬間、そのキャラクターは不死の存在に昇格した……と、言えなくもない。


A「ふむふむ」


――”現代編”のシナリオはホラーテイストのお話が多く、理不尽にキャラクターが死んでしまうことがある。せっかく育てたキャラクターを死なせてしまうのは辛い、ということで、このようなルールになった……と、私は記憶しているな。


A「へー。『えんぴつTRPG』にも、歴史があるんですねぇ」


――まあね。

 ちなみに「そうしよう」と最初に言い出したのはたしか、きみのお母さんだ。


A「…………………へーえ。……………………そうなんだ」


――さて。

 それではここに、レベルアップで覚えられるスキル表を印刷しておいたよ。

 次、もし黒男を使いたいと思ったら、彼が何を覚えたかを決定しておいてほしい。

 もちろん、新規キャラを使う場合は必要ないけれど。


A「ほい。了解です」


――ちなみにAちゃん。最近、学校は……?


A「え。行ってませんけど?」


――おや。そうか。


A「……それが、何か?」


――ふふふっ。そんな急に、哀しげな顔をするなよ。説教しようってんじゃないんだから。


A「心配しなくても、ときどきは行くようにします。ときどきは」


――学校って、気が向いた時に行くようなもんじゃないんだけど。

 でもまあ、暇な時間が多い方が、おじさんの遊び相手にはふさわしい、かな?


A「わー。不良を推奨する、わるい大人だー」


――社会人になると、遊びたいときに遊んでくれる友人は、重宝するものなんだよ。


A「じゃあおじさんは、不登校のあたしをもっとありがたく思ってください」


――はいはい。


A「それよりそれよりー! 次のセッション、いつにします?」


――少し間が空くけど、二週間後かな。


A「あら。そんなに空くんですか」


――こっちも一応、社会人だからね。暇なら学校にでも行けばいい。


A「ンモー。すぐそーいうこと言うー。……ちなみに、遊ぶ予定のシナリオは?」


――”ファンタジー編”を用意してる。いろいろ、昔の資料を漁って、ちょうど良いものを見つけたんだ。少し難易度が高いけど、楽しいお話だよ。


A「へーえ。腕が鳴りますねえ」


――本来二人用のシナリオだけど、一人でもまあ、なんとかなるだろう。


A「……ふむ。二人、ですか」


――まあ、今日のところは、そんな感じだ。もう良い時間だし、そろそろ帰るかい。

 それとも、晩ごはん食べていく?


A「うーん。ま、今夜は大丈夫です。帰って食べます」


――うん、それがいい。義兄さんによろしく。


A「はあい。それじゃあ、また」


――ああ。またねー。


【See You Next Session】

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