第10話
天使の赤ちゃんは両手ですくいあげた命の残骸を見つめて涙に暮れていました。
しゃくりあげるたびに大粒の涙がぼろぼろと目からあふれます。ふっくらした頬をスーッと伝って風に吹かれて舞い散るように海へと消えてゆきます。
太陽の光で金色に染まった涙のしずくが、二センチぐらいしかない小さな手の中にポトリと落ちました。
その瞬間、消えた命の残骸が明るい光に包まれました。
小さな
魂のかけらは小さな小さな生きものとして過ごした短い一生のあいだに、小さな魂に成長していました。
天使の赤ちゃんにはわかりました。もう死の苦しみも終わり、混乱していた意識も穏やかに安らいでいます。小さな魂は天国に戻るのです。
目の前で輝いている小さな魂を見つめて、天使の赤ちゃんはニッコリします。純粋な悲しみが純粋な喜びに変わります。
そっと両手をひたして懸命に生きた命の亡がらを生まれ育った海に戻しました。
浮かんでいる小さな魂に両手をさし伸べます。小さな魂にお別れを言うかのように・・・
柔らかな白い光が赤ちゃんの両手から広がって、小さな魂を包みこみました。一瞬明るく輝いてスーッとその姿が消えてゆきました。
「ありがとう。また会うときまで、さようなら!」
言葉にならない小さな魂の想いが天使の赤ちゃんの胸に届きます。
また会えるのです・・・
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