第6話


 天使の赤ちゃんはときどき羽をパタパタさせながら、大空を滑るように飛びつづけます。遠くを見渡すとまだあちこちで火山が爆発したり、地震が起きたりしていました。


 でもこの星には生きものがいないので誰も傷つきません。苦しみも不安も恐怖も死もありません。何が起こっても平和そのものです。


 太陽が沈むと翼をたたんでまっさかさまに急降下してゆきます。地面が近づくと羽を広げてすーッと滑空して砂浜に降り立ちました。


 翼のお椀の中であお向けになって満天の星と天の河に彩どられた夜空を眺めているうちに、天使の赤ちゃんはスヤスヤと眠ってしまいます。


 天使の赤ちゃんは気づいていませんでした。



 天国から落っこちたとき、赤ちゃんの羽のなかに小さな魂のかけらがまぎれこんでいたのです。地球の海に落ちた衝撃でかけらは羽からポロっとはずれてしまいました。


 かけらはとても小さいので海中をフワフワ漂いながら、ゆっくりゆっくり深い海の底に向かって沈んでゆきます・・・


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る