2017.12.11 初雪



 雪が降ると、全部塗り替えられてしまう気がする。



 一面の白。白。白。聞こえはいい。でも、全部同じにしてしまう、という点だけ見れば、都会のコンクリートジャングルなんかとべつに何も変わらないんじゃないか。降ったばかりのときこそ、ふわふわの砂糖菓子のようでもあるけれど、すぐに固まって取れなくなる。まるで過去のわだかまりみたいに。だから一番望ましいのは、雪が積ったら、そのつどすぐ寄せて、川とかに流してしまうことだ。


 そんなわけで、今日は初雪が降った。

 例年に比べても、かなり遅い。と思う。


 昨日解体を終えていてよかったよね。本当に。


 俺は……





 なんだかね。





 昨日、あんなにも幸福だったせいなのかな。

 いま、なにか、すごく怖いんだ。







 ……なんでだろう。





 まあ、うん。気持ちばかり書き散らしてもよくない。先生とご親友は今日も(このただでさえ凍りつくような空気の中)、例の教祖をいじめに行った。俺は、閉めたクリニックの部屋で、雅火さんの話し相手をしながら暇を潰していた……そう、今日の彼女はほんとうによく笑った。俺の初めて作ったココアを、すごくおいしい、と褒めてもくれた。なんだかそれだけが、異様に遅い——まるで何かタイミングを見計らったかのような——初雪の日の、唯一の救いだった気がする。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る