チートスキル『学習(ラーニング)』で異世界最強 ~Malice・Awaking~

さぼてん

プロローグ

――あれ、ここは……どこだ?


気が付くと、俺、アヤツジ・ケイトは見知らぬ場所に立っていた。

辺りを見回してみても、何もない。ただただ真っ白な空間が広がるばかりだ。


「お目覚めのようだねぇ、アヤツジ・ケイト君」

あっけにとられて突っ立ていると、後ろから突然、名前を呼ばれた。若い男の声だ。

驚き、振り向く。

そこには――線の細い美形の男が椅子に座り、頬杖をついてこちらを見つめていた。

その口元は、にやりと笑みを浮かべている。


「貴方は一体?」

「そうだね……神の使い、とでも言っておこうか?」

「神の……?いや、そんなことより、俺はどうしてこんなところに」

「おやおや、それは君が一番知っているはずだよ。思い出してごらん……君の身に、何があったかを、ね」


その言葉に、俺は目を閉じた。そして深く、思い出す――



「アヤツジ、今日暇?」

「おう」

「んじゃさ、買い物付き合ってくんね?」

「別にいいけど」

「ありがと、助かるよ」


それは、何気ない日常の会話だった。

ある日の下校途中のこと。俺はクラスメイトの男友達にそう言われ、寄り道をすることになった。

自転車を漕ぎ着いた商店街で、それは起きた。


「きゃあああっ!」

夕暮れの空に響く、女性の悲鳴。何だ何だと振り向くと――俺は言葉を失った。


「嘘だろ……!?」

そこには、腹部から血を流して倒れ込む男の姿があった。女性はその側に膝をつき、何度も名前を呼んでいる。


「押さえろ!押さえろー!」

直後。大人たちが、こぞって叫んだ。駆け出した彼らの視線の先には、マスクにサングラスと言った風貌の男。

その手には、血塗られた刃物が握られている――そう、通り魔だ。


奴は取り押さえようとする人々をかいくぐり、走っていた。

その方向に――俺たちはいた。


「おい、ヤバいぞ、逃げろ!」

「……っ、ああ」

友人の声で放心状態から戻り、逃げ出そうとする俺。

しかし、一歩遅かった。


「……え」


その直後、俺の腹部には深々と、凶刃が突き立てられていた。

あまりに突然の出来事に理解が追いつかないまま、俺は地面へと倒れ伏す。

そして次第に霞んでゆく視界と、全身を走る苦痛に、自分の身に起きた出来事を理解した。

ああ、俺は――



「俺は……死んだんですね」

「その通り。君は命を落としたのさ……」

突き付けられた事実に、肩を落とす俺。

まだまだやりたいことも、たくさんあった。それなのに――


「だが、心配することは無い」

後悔と悲しみで震える俺を励ますように、男が言った。

「可哀そうな君に、いい知らせをあげよう」

「……?」


男は軽く指を鳴らす。すると、何もない空間から真っ白な四角い物体が現れた。

男はそれを手に取り、俺へ渡す。

片手に収まるその物体に、俺は既視感を覚えた。これって――


「……スマホ?」

そう、携帯電話……俗に言う、スマートフォンだ。

困惑する俺をよそに、男は続ける。


「異世界転生と言うものに、興味はないかい?」

「異世界……転生」


それは、最近漫画やアニメで流行のフレーズだった。

死んだ主人公が異世界へ生まれ変わり、無双するというもの――偏った知識だが、大体はこんな流れだ。

まさか本当に、そんなことを言われる身になるとは思っていなかったが。

あまりにも興味深いその言葉に、思わず返答が口をついて出た。


「あります」と。

「そうか……なら、決まりだね」

男がもう一度指を鳴らすと、巨大な扉が現れた。

俺は引っ張られるようにその前へと立ち、手をかける。


「困ったことがあれば、そのスマートフォンを頼るといい。それでは、良き旅路を?」


その言葉を聞いた後、俺は勢いよく扉をあけ放った。すると、眩い光が俺を包む。

そして――






「……はっ!?」


気が付くと、レンガ造りの街の中に俺は立っていた――

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