第245話・おんぶしてあげるから乗ってと女の子から
しばらく休むとツキコは「靴下で歩けってわけにはいかないわよね、おんぶしてあげるから乗って」と、乗りやすいようにやや前傾姿勢になってくれた。ボクは、この連載で述べているとおり、たくさんの女の子のおんぶに乘ってきているわけだが、
ボクの側から「おんぶして」と頼むことがほとんどで、今回のツキコのように、女の子がわから「おんぶしてあげるから乗って」なんて言ってもらえたのは、初めてではないだろうか。嬉しすぎるよ、これって・・。
ボクはさっそく大喜びで、ツキコのおんぶに飛び乗った。安定したいいおんぶで、乗り心地最高・・そう感じた要因のひとつとして、女の子のがわから「おんぶしてあげるから乗って」と言ってくれたことは大きい。高校生の女の子の背中に、すがりつくように甘える気持ちでボクは乗っていた。
ツキコの体操服は、汗まみれで濡れていたのが、体育女子がボクのために全力で走ってくれたさっきの騎馬戦ウマがいかに大変なことだったかを示している。そして今このおんぶ。騎馬戦走りで疲れ果ててる女子高生が「おんぶしてあげるから乗って」って言ってくれたんだよー。
「ツキコはなんでこんなに優しい女の子なの?」
「ついつい、おんぶしてあげるなんて言っちゃったけど、重いよー」
「重くてゴメンね。でもツキコのその優しさで、こんくらいのおんぶ乗り越えられるよ。頑張って・・」
「えーーっ、おんぶ降りてくれないんですかぁ?」
「うん、ツキコのおんぶで最後まで行きたい。そのほうが楽ちんだし、ツキコのおんぶ暖かくて気持ちいいんだもん」
「気持ちいいってなんなんですか、、、こんな重いおんぶで歩かされてるこっちは、もう体力の限界ですー」と言うと
「アヤーっ靴」と叫んだ。
びっくりしたアヤは、あわててこっちに走ってきたが、靴は持ってきてない。
こっちへ来て、靴を履いてないボクの足を見て気づいた。
「あっ、靴ですね、持ってきます」とユーターンしようとしたアヤを呼び止める。
「靴はいいからいいから。ちょっとこっち来て」とボク。
「えっ??はい」
「靴のとこまで、アヤ、おんぶしてくれればいいんで」と言いながら、ボクは、
ツキコのおんぶから、アヤのおんぶに乗り換えた。
「ツキコは体力限界になっちゃったから、これ以上ボクをおんぶして歩けないんで、ここからはアヤのおんぶで、ね」
中学生で小柄のアヤで大丈夫だろうか、という気もしたが、アヤは「はいっ」と返事してボクのことをおんぶして歩き始めてくれた。さっきの騎馬戦ウマ走りでは脱落しちゃったアヤなので、彼女ひとりで70キロのボクを運ぶのはかなり苦しそうだったが、靴までは15メートルほどだったので、アヤ自身も「このくらいの距離なら」と頑張ってくれることになった。
アヤのおんぶに乗って感じたことは、中学生の女の子って、高校生とはこんなに違っていて、小さくて細いんだったか、ということ。骨の細さを感じるのは、高校生ほどまだ肉がついていないということか。そして中学生のアヤは体温も高いってことも、彼女の身体との接触から感じた。印象として強いのは、ボクの両足をホールドしてくれてるアヤの小さな手が、足に心地よさを与えるほど暖かいのだ。
ボクは自分が大人になってからのおんぶでは、中学生以下の女の子に乗るのは初めてなので、今回のこの小柄なアヤのおんぶの乗り心地を目いっぱいに堪能しようと感感覚のセンサーがかなり鋭敏になってそう。
そんなふうに中学生おんぶを感じていたのだが、アヤは70キロの重さに耐えきれず、ヒザから崩れ落ちてしまった。地面に崩れ落ちたアヤの態勢が四つん這いになり、その上にボクがドスンと落ちてきて座る感じは、まさに、ボクの大好きな
「お馬さん乗り」だ。
「アヤ、このままお馬さんして、ボクを運んでおくれ」と言いたいのを我慢して、さすがのボクも、女の子の上からどいてあげた。
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