第99話・女性にとって男をおんぶしてあげる特別感

 女の子におクチでやってもらって口内発射を遂げて、そのまま女の子のベッドで

寝落ち、って、甘えん坊男にとってはまさに極上のシアワセ。そんな眠りから目覚めると、隣で添い寝してくれてたカナコは、パッチリと目を開けていて、なにやら不満気にボクのことを見ている。思わず「ゴメン」と謝ってしまった。

「ホントに気持ちよさそうで、幸せそうに寝るよね、クロは」

「うん。だってカナコさんがこんなに優しくしてくれるんだもん」

「もう、午後だよ、起きてよ」

「カナコさんとベッドの中で、お話したいの」

 女性の立場として、ボクのような冴えない男から「おんぶして」と言われるのと「クチでやって」と言われるの、どっちを、ひどい要求だなぁ、と感じますか?

 どういう状況で言われるかによるけど、おんぶの方が、唐突過ぎて、頭ん中、真っ白になったわよ、あの最初のとき夜道だったし(第37話)。

 おんぶも、おクチも、嫌なのに我慢してやってくれたんですか? それとも、ほんの少しだけでも「おもしろいかも」という好奇心のような心ってありましたか?  もし絶対にイヤだとしたら、おんぶも、おクチも、やらないですよね。ボク思うですよ、おんぶとおクチには、そういう共通点があるかと。そういうって、どういうんだよだよね。それはね・・・、

 女の子が、絶対にイヤと拒絶しちゃったら、無理矢理やらせることはできないってとこ。おんぶの場合は、女の子は、しゃがみこむとか、後方に体勢を崩してしまえば、男が無理矢理に乗りかかったとしても、おんぶは成立しない。つまり、女の子のがわに、わずかながらでも「おんぶしてあげてもいいっか」と協力してくれる心が無ければ成り立たない。

 そして、おクチで、のほうは、本気で絶対イヤという女の子のおクチになど怖くて、男は自分のアレを入れられない。なぜ怖いのかって、噛まれちゃうんじゃないかって、女の子がボクの行為を憎んでいたとしたら。AV動画にはよくあるが、現実には、本気でイヤがる女性のクチにアレを入れるなんて怖すぎる。

 つまり、ボクが、おんぶやおクチしてもらえてうれしい原点には、女性のがわが「してあげてもいいっか」と思ってくれたこと、そういうふうにボクに心を開いてくれた点なんですよ。

 おんぶは、なぜ華奢でか弱い女性が、強くて重い男をおんぶするのよ、という男女逆でしょ的なジェンダーな感覚が、「イヤ」との感情になるのもあるかなとは思う。それに対して、おクチでは、女性が男性にしてあげるのが一般的ってんで、実は、おんぶほど抵抗感はないとかって、ありますか?

してもらうボクのがわからすると、おクチで、の方が、特別なことしてもらってる感なんだけど、女性のがわからすると、おんぶとおクチ、どっちが特別な人にだけしてあげることですか?

「特別なことを・・・」との意識をもってする行為としては、クチでのほうが上だけど、男の人をおんぶしたのなんてクロさんだけだし、1人にしかしてないってのでは、おんぶのほうが特別よね。

 好きじゃない人に対しての場合、おんぶとおクチ、どっちが抵抗ありますか? 

そりゃ、クチでのほうが抵抗あるわ。あっでもクロのことわたし、好きなわけじゃないのに、やってあげちゃったわけだし・・。最初のおんぶのときほどの抵抗感はなかったかも。それは、女がコレをしてあげるのはヘンなことではないっていう意識が事前にあったからかもね。

 ボクみたいな甘えん坊男からするとね・・、今回のカナコさんみたいに、おんぶから始まって食事や着替えも出してくて、おクチでまでも、っていうふうに、ひとりの女の子がフルコースしてくれてる満足感すごいものがあるんだ。カナコさんがこれほどのことしてくれている間に、ボクはなにもしてあげてない、という一方的な享受に甘えつづけてねそのゴールのような形で、おクチでやってもらえて。

 幸せ過ぎて、溶けちゃいそう・・。

「カナコさんは、ボクにしてほしいこと、ひとつも無いんでしょ」

「考えてみれば、ないかも」

「そこなんだよね。カナコさんは、ボクにやってほしいことがない。つまり見返りなんか求めてない。なのに素敵なフルコースでねぎらってくれてる。ありがとう。ボクを捨てないでね・・でもいつか捨てられちゃうのかな、その日が怖い。だから、その日がまだ来てない今は、ギューッと抱きしめてほしい」

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