カップうどんと共に
もるっさん
短編その2 夜食か?シメか?
私 恵美香は受験生。
「ちょっと甘やかされて育っちゃったかもしれないけどでも 受験だけは違うの。
私の大人としての第一歩なの。
だから 応援してね? はい!」
私は手を伸ばした。
視線の先にいるお母さんの表情は少しにがそうで「夕飯の残りを夜食にすればいいじゃない」なんて話を今にも言い出しそうな顔。
「あんた。。夕飯の・・ いいや なんでもないわ。」
そしてお母さんは私にコインを渡す。
何度も交渉を繰り返して現実の域にまで高めたシュミレーション。
イメージトレーニング。
「イケるわ私」
ホホがひきつって自分の顔が笑っていることがわかるくらい鮮やかに決まった。
お母さんは ちょっとかわいそう。
でも 何か話し出しそうだから部屋に戻らなくっちゃ
「穂美香! 冷蔵庫にソフト麺のうどん 入ってるのよ・・・」
「うん わかったわ」
私の完全勝利!!
この軍資金は 一部は家に代々生きている神々しいミドリガメ様のミッピーちゃんのエサ代として寄付をして残りは 「赤いキツネ」を購入するの。
忙しくて時間のない私にはピッタリの夜食だわ。
そしてカップ麺が出来る5分の間に 問題を解いちゃうと勉強がはかどるのよ。
こんな事を考えるのは私だけのはずね。
「ふふふ」
でも そんな日は長くは続かなかったわ。
買い置きをした「赤いキツネ」が毎夜 一つずつ数を減らしていったの。
「穂美香 勉強はどうなんだ?早く食べなさい」
「はい お父さん」
私の家は3人家族でお父さんはお父さんは受験生の私よりも遅く帰ってくるの。
だから お父さんは犯人じゃないわ。
やっぱり お母さんかしら?
「はい お父さん 卵酒よ!」
「ちょっと待ってくれ 俺 二日酔いなんだが・・」
「はいはい わかってるわ。どうせ酒臭いならグッと飲んで仕事に向かってもわからないわよ。気合が入るわよ」
「そう言うものなのか?」
「そう言うものよ!」
私の見立てでは 母が怪しい。
あのとき母が私に「赤いキツネ」を買うためのコインを与えたのは・・それは自分も「赤いキツネ」を食べるため。
なんてことなの・・私は踊らされてたのね。
母の裏切りを知った私は 受験勉強の疲れもあって試験日よりも前にグッタリと疲れてしまいました。
もう 勉強もする気が置きません。
部屋に戻ってベッドにもぐりこみました。
「これが 大人・・ はぁ・・」
グーグー
ドアを開ける音がする。
ガチャ ガチャ
真っ暗で時計が見えないので握りしめていたスマートフォンの電源を付けると深夜の1時を回っていました。
ああ そうか私は眠ってしまったんだ。そして お父さんが帰ってきたんだ。
「ト・・トイレ・・」
起き上がって小走りでキッチンを駆け抜けてトイレに向かおうとしたの。
ビックリしたわ
「お父さん??」
「穂美香か?」
私の「赤いキツネ」にお湯を注ぐお父さんの姿があったの。
犯人はお父さんだったのね。思わず指をさしちゃった
「それ・・私の夜食だったのよ」
「ああ そうだったのか? どうしてこんなに気の利いたものが用意してあったのか謎が解けてホッとしたよ。まあ そこに座りなさい」
お父さんは 「赤いキツネ」をもうひとカップ開いてお湯を注いでくれました。
「明日 箱買いしてきてやるから今日のところはお父さん特性の「赤いキツネ」を食べて手を打ってくれ」
「ふふふ お湯を注いだだけじゃない?いいわよ。いつもお仕事お疲れ様」
「なんだ。ただの酒飲みのおやじと思われているんじゃないかって思ってたぞ」
「そんなことないわ。でも テレワークの時代にどうしてお父さんは飲みに行くの?」
「お父さんは新しいことが苦手な人たちと新しい事を繋ぐ架け橋をしている。それがお父さんの仕事なんだ」
お父さんの話を感心して聞いていると私のカップにいつの間にか「赤いキツネ」のお揚げがもう一つ入れられていた。
お父さんは とっても笑顔でした。
「お父さん・・」ありがとう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます