裏切りの定義 『そーちゃん』と加奈の話

@enji2815

出会い



 俺、相川あいかわ 宗二そうじ三川みかわ 加奈かなに出会ったのは小学生の時だった。


 家の引っ越しでそれまで通ってた小学校を転校することになり、転校先で出会ったのが彼女だった。


 小学生の俺にとって転校というのはとても大きなイベントだった。なんせ住み慣れた家や仲の良かった友達と離れ、また一から友達をつくり遊ぶ場所も探さなければならない。


 そして何より転校をするということは、自分だけ周りと全く面識のない状態で、同年代の子供の集団の中に放り込まれるのだ。

 ハッキリ言って嫌だった、それは妹の愛梨あいりも一緒で二人でごねては両親を困らせた。


 それでも子供が幾らごねたところで引っ越しが無くなるわけではない、結局両親に「あんまり我が儘を言うようなら置いて行く」と言われれば黙ってついていくしかない。


 引っ越し当日には、俺や愛梨と仲の良かった友達が見送りに来てくれた。

 愛梨が友達と泣いていて、俺はそれを見て俺まで泣いたら何かに負ける気がして、平気な振りをして友達と何時ものようにバカなことをやってた。 でも車に乗って移動する時になって、俺も大泣きをしてしまって愛梨に慰められた。


 この頃から情けない兄ちゃんだな…って思う。


 転校先の学校ではしばらくの間、クラスに馴染めず一人でいた。 友達ってどうやったらできるんだろう? なんて考えていた。


 そんな俺を見かねたのか、当時隣の席だった加奈が声をかけてくれた。


「ずっと一人でいるよね? 友達はつくらないの?」


 今考えると結構残酷なこと言われてるなって思う。作らないんじゃなくて、作れないんだっての。


 しかし当時の俺はチョロかった、なんたって加奈はこの頃から めちゃくちゃ可愛くて、そんな彼女に声をかけられた俺は言葉が見つからず「うん…」しか言えなかった、そんな俺に加奈は


「じゃああたしと友達になろ?ね?」


 なんて言われた俺は即効で彼女のことが好きになった。


 加奈は一学年下の愛梨のことも気にかけてくれて、家が同じ方向だったこともあり一緒に登校したり、時間が合えば一緒に帰ったりもしてくれた。


 そんな彼女に愛梨も懐いて、二人は名前で呼びあうようになっていた。 俺は当時はまだ彼女を『三川さん』と呼んでおり、彼女も俺のことを『相川くん』と呼んでいたので、愛梨のことがかなり羨ましかった。


 こんな関係のまま俺と加奈は中学生になった。

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