第5話

 部屋の前に着く。

 ……さっきは危なかった。

 まさかこのタイミングで彼女と会うことになるとは……あー焦った。

 バレたらきっと呆れられただろう。また懲りずに酒を買ったのかと。

 ……それは嫌だな。


 ドアに手を伸ばす――――と、懐からビール缶がこぼれ出て、廊下に大きな音を立てて落ちた。

 びくつき、あたりを見回す。


 ――息を呑む。

 ソーダが箒を持って立っていた。


 心臓がバクバクと脈打ち、俺の脳は全身全霊を込めて今この状況から抜け出す方法を探していた。

 どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうすれば。


嫌われたくない 。




 ――――仕方が、無い。

 じっとソーダの目を見つめながら、ゆっくりと、ゆっくりと。

 微笑む。


 ソーダは何か言いかけたが、それを信じたようで、すぐに「気をつけないとダメだよ〜」と笑って去った。



 俺は罪悪感と一緒に残された。


 ソーダは騙したくなかった。


 この力は使いたくなかった。

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