勝負だ?いいだろう!
後ろから抱き付いていたレインを引き離した人物がいた。
「いい加減にしろ!」
ペリッとレインを引き剥がした。レインはその人物を冷たい目で見て声を低くして吐いた。
「………また貴様か?我が嫁との時間を邪魔して死にたいのか?」
「ふん、貴様の趣味に付き合わされるシオン令嬢を考えろ!」
このレインと対等に向き合っているのは、ムーンスター帝国と仲の悪いマーズ王国からの留学生でありマーズ王国の『第二王子』ガイア・マーズであった。
「大丈夫かい?いつも同性のレイン王女に纏わり付かれて迷惑してるだろう?嫌な事はちゃんと言った方がいいぞ?」
そう、ガイア王子はシオンが♂という事を知らないのである。ってか、レイン王女の婚約者である事は広く知られているのだが、シオンが王女の婚約者なんだと挨拶に行くと、シオンを見て♂なの?と信じられない人々が多く続出したため、男装麗人レイン王女は『百合』なんだと認識されていた。
シオンは♂なんだと叫んでも誰も信じないのである。(哀れな)
「えっと………私は♂なので同性じゃないですよ?」
「はははっ、シオン令嬢は冗談が上手いな。レイン王女に気を使わなくていいよ。俺が守ってあげるからな!」
まったく信じてもらえないのである。
「おい、人質の第二王子の分際で私の嫁に勝手に触るな」
マーズ王国とムーンスター帝国は小競り合いが絶えないが、商人の行き交いや国としての繋がりを保とうと、お互いの人材の交換などしているのである。
この第二王子のガイアもお互いの友好のために交換留学として来ているのだ。無論、少数ではあるが他にも留学生はいる。
「ふっ、妬いているのかい?君より俺の方がシオンとお似合いだからね」
「はっ、寝言は寝てからいいなよ?そろそろお前とは決着を着けた方がいいかも知れないな!」
バチバチッと火花が飛び散った。いや、マジで!レインは魔力を身体に纏わせて放電の様になっていた。そしてガイアも負けず劣らず魔力を纏わせた。
「ストーーーープ!!!!教室で何をするつもり!クラスメイトが怯えているでしょう!」
シオンがプンプンッと怒ると二人は慌ててシオンに謝った。
「ご、ごめん!シオン。でもこいつが!」
「そうだ。こいつがシオンに抱き付くから!?」
言い訳をする二人にシオンは止めの言葉を吐いた。
「言い訳なんてカッコ悪いですわ!そんな二人は嫌いになりますよ?」
!?
「「なっ─!?」」
驚愕する二人に、腕を組んでプイッと横を向いたシオンに二人のイケメンは膝を付いてショックを受けていた。
「これはこれでうざいですね………仕方がないな~」
シオンは凹んでいる二人に言った。
「はぁ~今日は週に1度のダンジョン探索の日でしょう?それで勝負したらどう?」
そう、この学園にもダンジョンがあるのだ。まぁ、初心者ダンジョンで僅か10階しかないのだけれど。このスター学園ではダンジョン探索が授業に組み込まれている。
ダンジョン探索は週に1度と決まっており、『全学年』同じ日に探索できるようになっている。それはダンジョン探索はパーティーを組むのが前提だが、同学年だけではなく全学年から組む事ができるようになっているからだ。
パーティーはだいたい4人~6人が主であり、アタッカーである剣士や戦士、後衛の魔法使い、僧侶などでバランスよく組むのが推奨されている。
そして─
「ふははは!そうだな!この無能王子に実力の差と言うものを見せてやる!」
「それはいいな!この見掛け倒しの偽物王子を黙らせてやる!」
シオンが言った側から復活した二人のイケメン王子はバチバチッと対抗心を見せるのだった。
「うんうん♪やる気があることは良いことよ?でもね─」
「「うん???」」
ゴチンッ!!!?
「ぎゃっ!」
「ぐがっ!?」
二人は強烈な拳骨を受けた。
「ほら、もうホームルームは始まっているのよ!さっさと席に着きなさい!」
いつの間にか来ていた担任教師のソフィア先生だった。
「今日はダンジョン探索の日なんだから死なないように気を引き締めなさい!」
初心者ダンジョンといっても魔物がでるのだ。油断はできない。
こうして、私達はホームルームが終わり次第、ダンジョンへ向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます