プロローグ②真実と回想モード中~
この世界には5歳になると『精霊の儀式』と言うのがある。その時、教会へ赴き自分に適した属性を調べてもらうのだ。
人には適正属性と言うのがある。例えば火属性が得意なら、そのまま火炎魔法が覚え易くなり腕力も上がり易くなる。逆に、苦手属性なら魔法の修得に時間がかかり、ステータスの増加も少なくなるのだ。故に、5歳になると例外なく国民は無償で教会で検査してもらうのだ。
私は5歳まで『普通』に暮らしていた。
家族には1つ上に姉がいて、1つ下に妹がいる三姉妹として育った。非常に不本意ではあるが………
そして、精霊の儀式を受けた時に前世の記憶が戻ってきたのだ。その時、私はこの世界での生活に頭を抱える事になったのだ。
「ひっく………」
教会の隅っこで泣いていると、とある少女が心配そうに話し掛けてきた。
「あなた大丈夫?どこか痛いの?」
それが『私』と『彼女』の出会いだった。
私はそれまでの経緯を彼女に全て話した。すると彼女はわかったわ!任せておいて!と、言って上着を私に掛けて行ってしまった。
すると、数日後に王城へ御呼ばれされました。
「面を上げなさい」
国王様の御前で顔を上げると、あの時の少女が王様の横にいた。
「また会ったな!私はレイン・ムーンスターだよ!」
ドレス姿の少女は正に王女様という姿であった。そして私も自己紹介をした。
「シオン・ファーレンドと申します。ファーレンド公爵家の『長男』です」
王女様と同じくドレス姿の私はドレスの裾を摘まんでカーテシーを綺麗に決めた。
「………にわかに信じられんな。本当に♂なのか?」
王様もマジマジと見詰めた。
「はっはっはっ、産まれて間もない時に『見て』いるではないですか?」
このクソ親父め!家の恥を堂々と言うな!
そう、『私』は『僕』なのだ。
「しかし公爵よ。大事な長男を、その……女装させて育てるのは如何なものかと思うのだが?」
キラキラッ!
王様!もっと言ってやって!?そして私のこの生活に終止符を打って下さい!!!!
私が5歳の時に前世の記憶が甦るまで、すでに『可愛い』と言う理由でずっと女装させられて過ごしていたのだ。もう止めたいと強く言えない自分も嫌だったけど、家族やメイドは嫌がらせじゃなく、ただの好意でそうさせていたのだからたちが悪いのだ。
バシンッ!
私が少し妄想していると大きな音が聞こえてきました。ハッとなって音の方を見ると、なんと!王妃様が王様を叩いていました。
「あなた!なんて事を言うのですか!美少女少年なんて国宝級の………いえ、全世界の宝なのですよ!」
え~と、王妃様?ごめんなさい。何言っているのかわからないです。
「それにうちのシオンはこっちの姿の方が似合うしなぁ~」
ちょっと待て!似合うからとかで、長男の人生を潰していいのか!?姉と妹とお母様とメイド達にいつも着せ替え人形にされる私の身になってよ!?
「まぁ、お父様………国王様の心配もわかります。国内有数の公爵家の長男が可愛い過ぎるという問題は重大ですわ!!!」
いや、ちょっと論点ずれてません?
可愛い過ぎるのが重要な問題じゃなくてね?男が女装して過ごしているのが問題なのよ?おわかり?
シオンは遠い眼をして表情が消えていた。
しかし、この後に信じられない爆弾発言が発せられた。
「なので、私がシオンの『婿』として公爵家へ嫁ぎますわ♪」
!?
ちょっと!どういうことよ!どうして私が同性の王女様と結婚することになるのよ!?
・
・
・
・
・
…………ん?
あれ?これで合ってるのか???
なんか、どれが正解かわかんなくなってきたわ!
「それは名案ですわね。でもレイン?シオンちゃんの方が可愛いと、ちょっと問題じゃないかしら?」
王妃様!実の娘に酷くないですか!?
「いえ、お母様!私が逆にかっこよくなれば良いのです!」
拳を握って大々的に叫ぶ王女様に私は本日、何度目かの言葉を吐いた。
「何言ってんの?」
こうして私の異世界生活が本当の意味でスタートしたのだった。
ただ一言わせて欲しい。
この国、本当に大丈夫か???
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