婚約破棄発表

「ええ? 本当に?」


マチルダは大喜びだ。


「もちろん、本気です。王妃様のご承認もいただいております。ダーナ嬢より、あなたの方がふさわしいと思いまして」


「まあ、なんて人を見る目のある方かしら!」


「姉に教えてあげたいわ」


「この場で婚約破棄を発表しましょう」


かたわらのフィル王子が言いだした。とんとん拍子に話が進んで、ロジャーもしめたと思った。


公爵がいれば反対しそうだ。だが、義母がこの調子では、ダーナと結婚してもあまりいいことはなさそうだ。やはり実の子は大事でも、継子の方はダメだなとロジャーはほくそ笑んだ。


フィル王子の方は、壇を駆け上り、大勢が見守る中、王弟殿下嫡子のロジャーから発表があると告げていた。




私はぼんやりしていた。


誰からも話しかけられない。


「やっぱり来るんじゃなかったわ」


みんながチラチラ顔を見てくる。なかには、感心したように、じっと見つめて来る者もいた。

トンデモおデブとでも思っているのかしら。

いたたまれない。




壇上で、フィル王子が大声を上げた。


「婚約破棄を発表する!」


会場に集まっていた全員が顔を上げた。ロジャーがフィル王子に促されて、宣言した。



「私、王弟家嫡子のロジャーは、公爵令嬢ダーナとの婚約を破棄し、妹のマチルダ嬢との婚約を発表する!」


「えっ?」


人々はざわついた。私は思わず、王妃様の顔を見た。

この婚約は王妃様がお決めになったことなのよ?


しかし王妃様は黙っていた。




「王妃様まで……」


発表を聞いて衝撃を受けた。


みんなに見捨てられた。




ロジャーはマチルダと並んで嬉しそうだ。


ボンヤリ立ち尽くしていると、フィル王子が満面の笑みを浮かべて、こちらに向かってきた。


「ダーナ!」

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