真実追及
王宮に戻ると、王太子殿下は考え込んでしまった。
残念ながら、ダーナの身の上についてではない。
夕べ、ダーナ嬢はパーティに出ていたらしい。まあ、それならそれで良しだ。おそらく元気なのだろう。
それより……マチルダ嬢である。
ロジャーが差し替えたいと言った意味をフィルは、めちゃくちゃ理解した。
あれはダメだ。パーティなぞに出したら、大ごとになる。
だが……?
そこで、王子はハタと気づいた。
あれほどの美女が社交界に出てきたら、大変な噂になっているはずだ。だが、あまり聞いたことがない。
フィルはロジャーのところに駆け付けた。
そして、夕べ、マチルダ嬢は夜会に出てきていたが、ダーナ嬢は来ていなかったという事実をつかんだ。
「マチルダ嬢に会わせろ」
「おっ、いいのか?誤解されるぞ?」
「そんな女なのか?」
「そんな女だ。あまり品はない」
ロジャーは下品に笑った。
あの窓の女性は、あふれんばかりの気品だった。なんともたおやかな風情だった。
とりあえず事実確認が先なので、次の夜会でマチルダ嬢にフィルは紹介してもらって、大後悔した。
つきまとわれ、話しかけられ、大いに迷惑した。
窓にいた女性ではない。絶対違う。
だが、フィルは意外と狡猾だった。
「迷惑してるんだよね」
そう一言いえば、彼の代わりに鉄拳制裁に出る、いや毒舌制裁に出る身分高いご令嬢や奥方なら、数に不足はないのが王太子殿下だ。
「マチルダ嬢にダーナ嬢を連れてきてほしいと頼んでよ」
フィルはロジャーに言いつけた。
「俺は会いたくない。まだ、マチルダ嬢の方がましだ」
「じゃあ、婚約破棄しろ。俺が許す」
「おっ、本気か? 王妃様にどう言うつもりだ。ダーナ嬢は王妃様のお気に入りだぞ?」
「大丈夫だ。任せろ」
割と黒い王太子殿下だった。
公爵家には、娘は二人しかいないのだ。絶対に使用人には見えなかった。どっちかが、どっちかなのだ。
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