ダーナの変化
ダーナの母は死に際に願った。
この娘の魔法力がバレませんように。
知られたら、あまり幸せな展開になるとは思えなかった。親友の王妃様はダーナの魔法力の知っていたし、王妃様のことは信用していたが、それとて、いざとなったら、(本人のためにならなくても)王家のために利用される可能性はあると不安だった。
故国においてさえ魔法力のない人間が大半を占める世の中である。ましてや、この国では魔法なんか嘘八百だと思われていた。誰も信じていない。
ダーナの母の魔法力は大したことなかったが、最後に彼女は娘の幸せを願って、ちょっぴり魔法をかけた。
印象が薄くなりますように。
相手が思っている容姿に見えますように。
それにより、少しでもトラブルを避けられますように。
そして、それは、娘が十分な魔法力を得て、自分で自分を守れるようになったら、解けて消えるほのかな魔法だった。
義母とマチルダにとって、ダーナは醜い娘であって欲しかったから、ひどく醜い姿に見えた。
ロジャーは、元々そりが合わない娘だったから、はっきりダーナの顔貌が覚えられなかった。
父は妻と妹娘が口をそろえてダーナを
だが、今や、ダーナは膨大な魔法力を駆使することができるようになってしまった。必要に迫られて。
母の魔法はもういらなかった。
それは消えていった。
残ったのは素のままのダーナ。
純粋な金髪と、白い肌、キラキラした青い目。
何よりもすらりと細い美しい体だった。パイなんか節制する必要は全然なかったのである。
本人に、自分の容姿についての自信が欠落していたので、鏡は物置小屋にはなかった。
したがって、ダーナ自身はこの事実を全くご存じなかった。残念。
「待ちなさい、マチルダ」
義母は叫んだ。
「もしかして、もしかしてよ? 放って置き過ぎたわ。万一、死んでいたらどうする?」
マチルダもギクリとした。
「それは……困るわ。私たちのせいになったらどうしましょう」
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君らのせいやがな
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