物置小屋での優雅な暮らし

まずは、公爵家のお屋敷から物を取ってくる魔法。


無から有は生み出せんませんからね。


変形は出来るけど、そもそも小麦がなければパンは作れない。



お屋敷の台所では、変な事件が頻発ひんぱつしたのではないかしら。朝、起きてみると、ヤカンの水が床にぶっちゃけられていたり、小麦粉がこぼれていたり、作ったごちそうがなくなっていたり。


ローストビーフ丸ごと、ひとつ、こっちに持ってきちゃったときは驚いた。


結局、全部食べ切ったけれど、保冷魔法をモノにしなくちゃならなくて、予想外のハードトレーニングになってしまった。



洗濯魔法に、お湯を沸かす魔法。


干してある洗濯物を見えなくする魔法。


服をつくろう魔法。


料理魔法。これ大事よね。おいしいものが食べたいもの。



一月も経つ頃には、大方の生活魔法はどうにかなった。


義母と義妹から解放されて気苦労もないし、私はどうもさらに太った気がする。

ロジャー様には太り過ぎだって指摘されていたのに、嫌われたらどうしよう。




とはいうものの、よく考えたら、どうでもいい。


婚約破棄されるんではないかしら。


見た目を変える魔法もモノにしました。すごいデブになってやろうかしら。きっと、絶対婚約破棄したいって言ってくると思うの。


ここには鏡がないから、わからないけど、美人でなきゃ嫌だって言ってましたしね。


でも、私だって、もっと優しい人がいい。王家の人や、貴族でなくたっていい。




私は気がついた。


私、一人で生きていける。

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