事前資料




 三億円事件


 

 

 1968年(昭和43年)12月10日に発生。旧N銀行国分寺こくぶんじ支店からT工場にボーナスを運んでいた現金輸送車が、中城なかじょう刑務所沿いの『学園通り』を走行中、偽白バイ警官に停車させられた。


「支店長宅が爆破された。この車にも爆弾が仕掛けられている可能性がある」


 四日前、支店への脅迫状騒ぎから神経質になっていた銀行員は、すぐさま車を降りた。


「ダイナマイトだ! 逃げろ!」


 警官が叫ぶ。車の後ろから、白い煙が上がっていた。銀行員四人は避難。 男は爆発するはずの輸送車にそのまま乗り、逃走した。煙の正体は、発煙筒に火を点けたものだった。


 時間にしてわずか三分。負傷者は皆無、ボーナスもすぐに保険が下ろされ、国内で金銭的な損をした人間は一人残らずいなかった。


 日本史上最大のミステリーを乗せた白バイ警官は、三億円とともに忽然と姿を消し、七年後に時効が成立して事件の幕は下ろされた。


 これが世にいう「三億円事件」である。






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