第29話 テキサスの病院

 2週間後


 テキサスの病院にたどり着いた。

海外旅行は、高校の修学旅行で行った韓国が初めての海外旅行で、その後にせっかくパスポートあるんだからと両親と行ったグアムの2回だけ。

ひとり旅での海外旅行は初めてだ。

でも、片言の英語でもここまで来ることが出来た。

なんか、自分で自分を誉めたい感じ。


病院の受け付けで、日本から来た『ゆめちゃん基金』の関係者です。と伝えたら、すんなり病室へ案内してくれた。

セキュリティ甘過ぎてちょっと逆にビビった。

案内してから、逮捕とかされるんじゃないだろうなぁ。

いかにもアメリカ人の中年女性って感じの、太った女性の後ろを歩きながら、そんなことを考えていた。


ここよ

みたいなことを言われて中に入った。


 由芽ちゃんは、ベッドで起きあがってゲームをしていた。

「こんにちは」

と声を掛けると、えっ!って驚いた顔をして俺を見た。

「日本から来た、操人奏大です。

小西由芽ちゃんだよね。

少しだけお話させてもらっていいかな?」

「いいよ」

「ここ座ってもいい?」

「いいよ」

椅子に座って、リュックからスケッチブックを出した。

【くりとそうた】と平がなで書いて、由芽ちゃんに見せた。

「なんか、ごめんね、突然。

一回声に出して 名前呼んでもらってもいいかな?」

「くりたしょうた。

くりたしょうたさん。なにしに来たの?ゆめ、今は 暇だから相手してあげるけど」

「あはははは。ありがとう」

滑舌が悪いのかな。

【くりと】じゃなくて【くりた】って聞こえるな。

【そうた】も【しょうた】って聞こえるけど、自分ではちゃんと言ってるつもりかもしれないな。

でも、目で見て、くりとそうたって認識はしてもらえたはず。

それなら大丈夫そうかな。


なんとなく、口調が亜弥に似ている。

顔も、亜弥を幼くしたらこんな感じかって顔。

色が白いのは、外で遊べないからか。

「お姉ちゃんは、今はいないの?」

「うん、今日はお姉ちゃんお休みの日だから。いつもはいるけど、今日はいないの。だから、ゆめ、今日は暇なんだ」

「そっか。じゃ、暇つぶしにお兄ちゃんとお話してくれる?」

「うん、いいよ」

「由芽ちゃん元気そうに見えるね」

「うん、元気。ここに来て5ヶ月たったけど、

最初は慣れなかったんだけど、今は慣れたし、

発作もないから今は元気にしてるよ」

「そうなんだ」

「でも、外には出れないから、ここでスイッチしてるだけ」

「なんのゲームやってるの?」

「どう森とか、マイクラとか、スプラとか」

「あ、スプラはお兄ちゃんもできるやつだな~。わりと上手いよ!」

「へぇ~っ。うまそうに見えないけど。ウデマエどのくらい?」

「S+かな」

「S!?それって、Bの上のAの上のSなの?」

「そうだよ」

「マジか!じゃ、やってみてよ」

完全に信用してないって感じだな。

ってか、大学生になってからやってないからな~。ウデマエ鈍ってるかもな~。

はい、ってSwitchを渡された。

由芽ちゃんに見えるようにちょっと椅子を近づけてスプラをやった。


「え!!ほんとにマジでうまいじゃん!!

ローラー遣い すご!!くりたしょうた!!」

あはは!呼びすてか。

「お姉ちゃんはゲーム全然下手くそなんだよ。

ゆめが教えてあげるんだけど全然センスないの。

C+から全然あがらないんだもん」

「そっか」

「でもね、優しいから大好き」

「そうなんだ~」




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る