動機-初めての一人旅-

 まず、初めにでも触れたエッセイを書こうと思った動機についてから話しましょう。

 今年、僕は念願の一人旅に行きました。コロナも落ち着きを見せ、ワクチン接種も2回済ませたということで鹿児島まで1人で旅に出たのです。特に隠すこともないので、友人たちにはお土産いる?などと話をしていました。誰の目から見てもワクワクしていたでしょう。余談ですが、この時友人たちは実は彼女と旅行に行く派と彼女と別れて傷心旅行派に分かれて議論していたそうです。

 さて、そんな議論などいざ知らず。1人でウキウキで新幹線に乗り込んだ僕はイヤホンをつけ、お気に入りのプレイリストを再生していました。そもそもなぜ1人で旅行に行こうと思ったのか。それは1人が好きだから。ただそれだけの理由でした。僕は非常に有難いことに友人に恵まれています。誰と遊ぼうと悩む時があるほどです。いつも僕を笑顔にしてくれる友人たちは心の底から大好きなのですが、それでも1人でいる時間も好きなのです。3日も1人で知らない土地にいると寂しいのかな、などと考えながらも、現地についてからの動きをシュミレートして新幹線に乗っていました。

 長らく新幹線に揺られ、ようやく鹿児島に到着しました。非常に天気もよく絶好の旅日和といった感じでした。もちろん初一人旅ですので、旅日和というものがどういうモノなのか全く分かっていません。感覚で喋っています。この日のために新調したサングラスをかけ、まずは腹ごなしと海鮮丼を食べてからホテルに向かいました。やはり海が近いということもあり魚が非常に美味しかった。僕は内陸県の出身なので海には憧れがあるのです。

 ホテルに着くとやはりお客さんは少なく、なんだか秘境にきたような気持ちになりました。まぁどのみち1人なのであまり関係ないのですが。ホテルの廊下からは海が一望でき、あぁ、綺麗だな、来てよかったなと思いました。折角なので、夕飯の時間まで海岸沿いを散歩していました。対岸に見える桜島を望みながら、初めて見るフナムシに背筋を凍らせ、気の抜け切った野良猫の昼寝の横を通り、鹿児島の街並みを感じながらホテルへと戻りました。夕食に食べた黒豚、とっても美味しかったです。あまり食に関心を持たないタイプなのですが、これはもう一度食べたいと思いましたね。

 夕食も済ませお風呂にも入り、明日の行動をおさらいしようと考えていました。僕は大筋の計画だけは立てておいて、細部はその場で決めようというタイプの人間ですので、どこをどういう順番で回るのかだけを決めていました。神宮、温泉、海、どれもとても魅力的なスポットです。僕が計画しているので当然なのですが。

 僕は結構感動屋で、趣味の映画や漫画でしょっちゅう泣いてしまいます。卒業式でも泣きましたね。場合によっては飲み会でも泣きます。最近飲み会なんて久しく行っていませんが。

そんな僕ですので、ずっと行きたかったところに行ったら感動してじーんと来るんじゃないかと思っていました。1人で旅行に行けるほど成長し、好きなスポットを巡る。人前で泣くのだけは勘弁だぜ…などと思いながらその日は眠りにつきました。


 そして迎えた2日目。交通網の関係で神宮と温泉だけの訪問となりましたが、問題はそんなことではありませんでした。

僕の心は全く動かなかったのです。


続く

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